Creative City Yamagata

山形、ときどき日記。
#01
みよし工業

2025.12.09.Tue

Text: 馬場正尊
Masataka Baba/オープン・エー代表取締役・建築家・東北芸術工科大学教授、株式会社Q1代表

MRI室の扉から、ピアスまで。
どっちもアート。

山形市の北の端、天童市との境界近くに、みよし工業の仕事場はあった。訪れたのは、雪が降る氷点下の冬の日だったが、工場の中は大きな音とモノづくりの熱気で溢れていた(でもやっぱり寒かった)。

みよし工業は金属加工の専門企業で、特に板金(ばんきん)の特殊加工を得意とする。ぼくらが訪問した時は、病院の検査で使用するレントゲンとかMRIの部屋の扉の加工が行われていた。めちゃくちゃ重くてデカい金属の扉。万が一にも電磁波とかが外部に漏れたらいけないから、ミクロン単位で金属を曲げる加工技術が必要らしく、それをつくれるところは日本でも数少ない。だからここに仕事が集中する、ということらしい。そんな高度なものがこの地でつくられているなんて……。すぐそばを日常的に行き交っているはずの僕らは全く知らずにいた。そういうことが、おそらく山形のいろんな地で起こっているのかもしれない。

みよし工業というこの会社にやってきたのは、山形にあるクリエイティブな企業を見つけてインタビューに行く、という企画でのこと。紹介してくれたのは、この会社のWebサイトを作ったデザインカンパニー、akaoni。小さな金属加工の会社のこのメディアが、めちゃくちゃかっこいい。見ているだけで企業姿勢や理念がじわっと伝わってくる。この「じわっと」というのが山形らしくもある。

みよし工業Webサイトより

働いている人たちの中に、東北芸術工科大学の卒業生たちも数人いた。彫刻科出身なんて、確かにぴったり。金属加工は得意そう。役員をされている斎藤いくみさんは環境デザイン学科(現在の建築・環境デザイン学科)出身。ちょっと意外な気もしたけど、培った企画力が新商品開発に活かされている。こういう現場を見るとうれしくなる。芸術の大学で学ぶクリエイティビティが、社会のいろんな場所で、いろんな形で生きている。

いま開発中の新商品は、なんと、アクセサリー。デカいMRI室の扉をつくっているところで、極小のピアスをつくったりしている。両極端のようでいて、繊細さと精密さという意味で、同じような精度が要求されるということらしい。なんだか納得。

そうやってみると、涙形に加工されたチタンの美しいピアスが、さらに意味深く見えてくる。そもそもピアスがチタンってなんなんだろう。飛行機とかロケットの機体に使う素材のはずだけど。でも軽くて、錆びなくて、独特の反射があるから、確かにピアスにぴったりなのかも。この、横断するスケール感が、たまらない。

どんな経緯と思いでこんな商品が生まれたのか、詳しくは取材動画を見て欲しい。

ダイナミックさもあるけど、優しさたっぷりの取材だった。これもまた、なんだかとても山形らしい。よし、今度この精密な金属加工が必要なデザインを、なんかの建築で設計して、みよし工業にお願いするぞ、と思いながら取材を終えた。

人材募集も時々あるみたいなので、興味がある方はぜひ!

◾️みよし工業有限会社
〒990-2211 山形県山形市十文字 字韮窪北3455-118
TEL:023-686-4747 FAX:023-686-2647
https://miyoshi-i.com/

Text: 馬場正尊
Masataka Baba/オープン・エー代表取締役・建築家・東北芸術工科大学教授、株式会社Q1代表