Creative City Yamagata

グランマルシェ2025
「Work to Play
しごとの未来を想像する」

2026.04.21.Tue

Photo:三浦晴子 Miura Haruko
Text:那須ミノル Nasu Minoru

やまがたクリエイティブシティセンターQ1「グランマルシェ2025」レポート
~Work to Play しごとの未来を想像する~

2025年8月29日から3日間、やまがたクリエイティブシティセンターQ1(以下、Q1)において「グランマルシェ2025」が開催された。のべ5500人を超える市民が来場し、賑わいに満ちた夏の時間を楽しんだ。

1.Q1の3回目の周年祭

創造都市やまがたの拠点として2022年9月1日にオープンしてから丸3年。Q1は「クリエイティブと産業をくらしでつなぐ」という理念を掲げ、様々な試行錯誤を絶え間なく続けてきた。地元の小さなコーヒースタンドや、セレクトが光る本屋、人気のハンバーガー店、地元産フルーツをふんだんに使ったスイーツを提供するカフェなど、個性ゆたかなテナントとともに歩みながら、エッジの効いたビジネスの集合体として多くの市民を惹きつけてきた。また、様々な分野における先駆者をゲストとして招いたトークイベント「クリエイティブ会議」は着実に回を重ね、未来志向のアイデアを集めてきた。「Q市」と名付けられたマルシェは、「農」「古着」「ワイン」などの新しい切り口や提案を試みながら、店舗と来場者を結ぶ多くの出会いを生み出してもきた。「PlayQ」などの教育コンテンツでは、子どもたちに学びの楽しさを伝えてきた。

周年祭「グランマルシェ2025」は、こうした活動の積み重ねであった3年間を凝縮した集大成ともいえるもの。1日目には「ナイトマルシェ」を、2日目には「ワインマルシェ」を、3日目には「日本酒マルシェ」を、とテーマを変えたマルシェを連日展開した。音楽ライブや映画の野外上映、クラフトやデザインのワークショップなど多彩なプログラムを揃えたが、これらはユネスコ創造都市ネットワークの8分野(映画、デザイン、クラフト、メディアアート、音楽、食文化、文学、建築)に呼応するよう設計されており、Q1が積み重ねてきた知恵とネットワークを生かした構成となっていた。また、単なる集大成にとどまらず、新たな挑戦も用意されていた。

第一小学校中庭でひらかれた「映画」のイベント「野外上映会」
ギタリスト伊藤ゴローとピアニスト佐藤浩一による「音楽」ライブ
Q1を飛びだし、旧西村写真館を会場に開催された「カラーマンやしろ」による「メディアアート」イベント
「クラフト」のワークショップであるROOTS & School「おかしな植木鉢をつくろう」の制作風景
PlayQでは原田祐馬さんを講師に迎えた「デザイン」のワークショップも開催


2.テーマ「しごと」—— Work to Play

「グランマルシェ2025」のテーマは「しごと」。キャッチコピーは「Work to Play」である。Q1に集う人やモノを「仕事」の視点で見つめなおし、「これからのしごと」を考える試み、ということだろう。3日目に行われた「第17回クリエイティブ会議」では、Q1代表・馬場正尊氏が「19世紀の仕事は『Labor(労働)』、20世紀は『Work』でした。そして21世紀の仕事は『Play』になるのではないか、と考えたのです」と語っていた。

グランマルシェ2025「しごと」のメインビジュアル
「第17回クリエイティブ会議『二拠点思考とこれからの仕事』」のゲスト指出一正氏。二拠点の生活から見えてきた独自の仕事観を語った

「Play」という言葉には、「遊ぶ」「楽しむ」「演じる」「役割を果たす」などの意味がある。Googleのようなクリエイティブ企業は、遊びの感覚を重んじるプレイフルな文化で知られる。大谷翔平のようなアスリートの姿にも、「Play」としての仕事の喜びが見える。それは、楽しみながら身を捧げるように全力で挑み、成果を生み出す態度のことだろう。この「Play」な姿勢こそが、AIにも代替されない、人間的でユニークなしごとの在り方へとつながっていく。高杉晋作の「おもしろきこともなき世をおもしろく…」や、『論語』の「之を好む者は之を楽しむ者に如かず」という言葉が重なって思い出される。「Work to Play」は、「仕事は誰かにやらされるものではなく、自分自身が楽しんでこそ磨かれるもの。山形のまちで心から『しごと』を楽しもう」というメッセージなのだろうと感じた。

ROOTS & School 特別授業「美味しいアイスコーヒーの淹れ方を学ぼう!」より

3.「しごと」の博覧会としてのグランマルシェ

その意味で、グランマルシェ2025は、「しごと」の博覧会だった。ナイトマルシェに並んだ飲食店やブリュワリー、ワインや日本酒の造り手たち、各トークイベントの登壇者やワークショップの講師、そして来場者——この場にいたすべての人が、何らかの形で「しごとを楽しむ人々」の集合体だった。

日本酒マルシェの皆さん
「どうやって本屋になるのか?」スペシャルトークイベントにて。1冊の本を売る森岡書店の森岡督行氏と移動本屋ペンギン文庫の山田絹代氏が、それぞれの本屋のはじまりを語った

新企画「リクルートQ」も注目を集めた。Q1の廊下には企業の求人バナーが並び、来場者にメッセージを投げかけていた。またトークイベント「スーパー社長3」では、山形市に関係の深い3人の若手経営者が登壇し、それぞれが働く楽しさを語った。

Q1らしい面白さがあり、そしてまた人間味が滲むような求人メッセージとなっていた吊り広告
トークイベント「スーパー社長3」に登場した、山形酸素の島津康社長、リンベルの東海林勇丞社長、愛和建設の横山隆太社長は、若さと熱気のある経営者トークを繰り広げた

さらに、「夜の学校」では佐藤孝弘山形市長が先生として登場。中高生を前に「政治学入門」の授業を行い、「ぜひ政治家を目指してほしい」と溢れるような熱量で語りかけていた。

佐藤市長による熱のこもった授業となった「夜の学校」の様子

4.クリエイティブとは、試行錯誤しながら進むこと

来場者の注目を集めたものの一つが、東北芸術工科大学の学生たちによる「ソーメンスケープ」。Q1の2階から前庭へ伸びる、全長20メートルにも及ぶ流しソーメン装置である。勾配のある竹の滑走路を水とソーメンが駆けてゆき、子どもたちの歓声があがる。前年の2024年にも「流しソーメン」は登場したが、それはいわばふつうの流しソーメンだった。しかし、2025年版はもっとずっと過激。勾配、構造、仕掛け……、Q1という建物だからこそできるチャレンジを存分に試みている、という印象。時おり、勢い余った水が、竹の接合部から飛び散って地面に落ちていたが、「ビシャッ」というその音は、手づくりのチャレンジゆえのリアルを感じさせて、非常に興味深かった。

そこには「思いついたなら、まずやってみよう」という精神が息づいていた。手探りで、試しながら、少しずつ前へ進むという姿勢。それこそ、Q1らしさである。日々トライアンドエラーを繰り返しながら、未来をちょっとずつ手繰り寄せてゆく。そういうQ1の姿が感じられる、「グランマルシェ2025」を象徴するような風景だった。

Photo:三浦晴子 Miura Haruko
Text:那須ミノル Nasu Minoru