Creative City Yamagata

ここは創造都市やまがた

夜の学校 01 _
DNAでわかる
生き物の暮らし/
玉手英利 先生

2025.04.18.Fri

Text: 那須ミノル
real local山形ライター。
https://www.reallocal.jp/yamagata

「夜の学校」01 レポート/「DNAでわかる 生き物の暮らし」玉手英利 先生

2025年3月10日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1にて「夜の学校_01」が開催されました。先生は、生物学者であり山形大学学長である、玉手英利さん。授業タイトルは「DNAでわかる 生き物の暮らし」です。定員20名の席は満席、大人から子どもまで幅広い年齢層の山形市民が参加しました。

この「夜の学校」は、クリエイティブをテーマとした、創造都市やまがたの市民学校です。優れた知恵や研ぎ澄まされたスキルやさまざまな得意技を持った方に先生としてご登壇いただき、授業いただくことを通して、生徒である私たち市民にその知恵を分けていただく、という座学の時間です。これにより、市民みんなでクリエイティブのちからを高めていく、ということを目的としています。

創造都市やまがた「夜の学校」についてはコチラ

この授業の内容について

玉手先生によるこの授業は、以下の3つのセクションによる構成で進められました。私たちの日常のすぐそばにいる生き物たちの「なぜだろう?」という不思議を、DNAを手がかりにした調査によって紐解き、真実に近づいていった、というような研究の成果を、わかりやすく解説していただきました。

§1 / 吾妻の白猿はなぜ白いのか
§2 / 真冬に出てきた仔熊の理由
§3 / 春日大社のご神鹿の起源

面白かったところ

§1 / 米沢に生息が確認されている「吾妻の白猿」。そのうちの一匹である「チッチ」の毛やウンチに含まれるDNAの情報から、一体なぜチッチの体毛は白いのか、という謎が少しずつ明らかにされていきます。そもそも生き物の毛が白かったり黒かったりするのはなぜなのか、そこにはどんな仕組みがあるのか、どうやらDNAや酵素の働きなどが関係しているらしい、ということなども学びながら。

§2 / 2007年に、鶴岡市の民家の軒下に潜り込み、衰弱した状態で捕獲された一匹の仔熊をめぐる考察。後にわかったのは、この仔熊は実は当時まだ1歳前後だったということ。本来であれば母親と一緒に行動しているはずの歳であるというのに、いったいなぜこの仔熊は単独行動し、こんなに衰弱するまでになってしまっていたのか……。その当時の熊の出没状況やDNAの解読から、その理由が色々と見えてくるのでした。

§3 / 鹿がたくさんいることで有名な、奈良公園、春日大社。「ご神鹿」と呼ばれ、神様の使いであるとされているこの鹿たちは、いったいどこからやってきたのか。その由来の物語も、実はDNAを調べることで突き止めることができるというお話。そしてその調査の後に、奈良の自治体担当者から依頼されたある案件について……。

いずれも、身近な生き物たちを題材にした研究の話題で、しかも調査によってだんだんと謎が解けて「わかってくる」のがとてもスリリングに感じられました。
最後に玉手先生から「山形は、野生の生き物を普通にしかも安全に見ることができるという、とても稀な土地。みんなにその楽しさをぜひ感じていただきたい」というようなメッセージがありました。

玉手英利(たまて・ひでとし)
生物学者・山形大学学長/1983年東北大学大学院理学研究科修了。専門は進化生物学、生態・環境、生態遺伝学。山形大学理学部長、山形大学小白川キャンパス長を経て2020年より現職。

Text: 那須ミノル
real local山形ライター。
https://www.reallocal.jp/yamagata