2026年3月18日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1にて「Q1デザインコンペティション2025 in collaboration withみよし工業」の公開審査会が開催された。
このコンペには総計96ものデザイン案が寄せられ、そのなかから1次審査を通過したのは5案。そして迎えた公開審査会の結果、山本悠平さんの「重力が起こす小さな出来事を楽しむ装置」が最優秀賞に選ばれた。

Q1デザインコンペティションについて
「Q1デザインコンペティション2025」は、山形市とQ1とが主催するデザインコンペ。2024年度にはじめて開催され、今回で2回目となる。創造都市やまがたのクリエイティブ拠点であるQ1から、新しいアイデア、そして新しい商品や産業を生み出していこう、という取り組みのひとつである。「創造都市やまがた」は、クリエイティブのちからで経済をドライブしていこうとしている。
テーマと審査ポイント
今回のテーマは「新しい装置」。応募要項によれば「条件は、実際につくれること。販売できること。みよし工業がつくりたくなること。誰かが驚いたり、喜んだり、愛したりできること」である。また、審査のポイントとなるのは次の4点であるという。
1)みよし工業が製作できるもの(ステンレス・チタン・アルミ・銅・ニッケル合金等の非鉄金属)。複雑に動く機械や、精密な機構や部品を有するモノは得意ではありません。みよし工業の技術を活かし、拡張するような装置を期待しています。
2)商品化を想定し、配送サイズ「160サイズ以下・25kg以内」とすること。
3)流通を意識した製作工程、期間とすること。
4)寸法・仕様・納まり等、わかりやすく表記すること。

協賛企業みよし工業について
このコンペの協賛企業であるみよし工業有限会社は、山形市に本社と工場を有するものづくり会社。とくに非鉄金属を素材とした特殊造形を得意としている職人集団である。建築、医療、工場などさまざまな分野で必要とされる特殊な道具、家具、部品などをオーダーメイドでつくりあげるB2Bビジネスを主力としてきたが、近年は職人の技術を活かしたB2C向けのブランド創造を模索するなど新しい取り組みを積極的に進めている。
みよし工業Webサイト https://miyoshi-i.com/
審査員について
コンペの審査員は以下の5人が務めた。
山田遊(バイヤー)株式会社メソッド代表取締役
宇南山加子(デザイナー)株式会社SyuRo主宰
坂井直樹(金工作家)東北芸術工科大学准教授
小板橋基希(デザイナー)株式会社アカオニ代表
斎藤栄作(板金職人)みよし工業有限会社代表取締役
1次審査について
2026年3月5日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1にて、一次審査が行われた。応募されたアイデアの数、96件。山形市からだけではなく、全国各地の都市やさらには海外からの応募もあったという。各応募者により提出されたA3サイズ横1枚の提案書をもとに審査が行われ、その結果、最終審査に5案が残ることとなった。

公開審査について
2026年3月18日、1次審査を通過した5案についての最終審査となる公開審査会がやまがたクリエイティブシティセンターQ1にて行われた。案を提出した応募者みずからが会場に登壇し、自身のアイデアについてのプレゼンテーションを行なった。応募者はそれぞれに用意したモックアップを見せながら、自身のアイデアについて具体的に説明した。その後、審査員と応募者による質疑応答が行われた。


「商品としてどのような場所に置かれることを想定しているのか」「販売価格はどのくらいと見込んでいるのか」といった流通的観点からの質問や、「素材や仕上げについてどのように考えているのか」といった製作的観点からの質問などが及んだ。
最終審査の結果について
すべてのプレゼンテーションが終了した後、審査員による最終審査が行われ、審査結果が発表された。結果は次のとおり。
【最優秀賞】
山本悠平さん「重力が起こす小さな出来事を楽しむ装置」
【優秀賞】
住本佑介さん「stage ––間をつくる舞台装置––」
佐々木健五さん「SINK ––置き方がスイッチとなり、暮らしの場を最適化する装置––」
【Q1賞】
河野愛さん「Kyomei Mobile ––共鳴モビール装置––」
石田浩康さん「Shaker Bank ––貯金を”聴く”装置––」
講評について
審査と発表を終え、審査員から寄せられたコメントには次のようなものがあった。

・「新しい装置」というテーマは、なにをつくってもいい自由があり、用途から解放されたもの、見たことも聞いたこともないような新しいものに出会えたような感覚があった。
・ここまで抽象的で、機能性を追い求めないコンペも珍しい。そこからどんな新しいものが生まれ、生活者はそれにどんな影響を受けるのか興味深い。「新しい装置」というテーマがもつ抽象性がどの作品にも見られたと思う。
・最終審査に残ったものはどれも、音や質感など、人間の五感に響くものだったと思う。
・ファイナリストのひとたちは、ぜひ世の中にプロダクトを生み出していってほしい。買う人や共感する人がいてこその商品なので、どういったところに置いてもらいたいか、どういうお店で、どういう人たちに買ってもらうのか、どこまでも先のことを考え抜いてほしい。そして、作り手をリスペクトすることをいつも忘れないでほしい。
・心に響く作品が多く、審査が楽しかった。世にものをだす喜びを感じてほしい。いい意味で、いい「間」のある、いい距離感のものが多かったと感じた。
・既存にはないもので、製作製作や販売をする側がちょっと不安になるくらいのチャレンジングな姿勢があり、また完成された世界観があるものが選ばれたと思う。
・製作の現場にいると「つくれるかどうか」から発想しがちだが、そうしたものとはまるでちがう、ひとの心に響くものに出会えたと思う。
終わりに
コンペの最優秀賞に選ばれたアイデアは今後、商品化への道がひらかれていく。おそらくはリアルな制作の現場でアイデアはさらにブラッシュアップされ、やがて商品化され、そしていつかはこのQ1やさまざまな場所で販売されることだろう。その日の到来を待ちたい。