Creative City Yamagata

小さな家具から
街が変わる。

2024.11.22.Fri

【レポート】第15回クリエイティブ会議「小さな家具から街が変わる」

2024年8月29日(木)から開催された「やまがたクリエイティブシティセンターQ1・グランマルシェ2024」の最終日となった9月1日「第15回クリエイティブ会議」がひらかれましたゲストは建築家の芦沢啓治さんと鈴野浩一さんモデレーターを務めたのは同じく建築家であるQ1代表の馬場正尊さんです

Q1の「クリエイティブ会議」とはまちのクリエイティブと産業とをどうやって結びつけていけるのかそして持続可能な地域社会づくりにどのように繋げていけるのかその具体的な方法論や可能性を探ることを目的として先進的な活躍をされているクリエイターとQ1ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議のようなもの15回目となる今回のテーマは「小さな家具から街が変わる」ゲストの芦沢啓治さんは東日本大震災によって被災したまちで「石巻工房」という公共工房を立ち上げたファウンダーでありそれを家具ブランドとして育てたプロデューサーもうひとりのゲストである鈴野浩一さんもデザイナーとしてその石巻工房に深く関わってきました

馬場さんはこの会議の開催にあたり次のように語っています
「今回のクリエイティブ会議では特に家具にフォーカスしそのデザインやそれが生まれるプロセス生まれたあとの街への波及について掘り下げます東日本大震災の後被災したまちで家具と産業を興そうと『石巻工房』を立ち上げ世界へ展開するブランドへと育てた芦沢啓治さんそしてその石巻工房の代表作でもある『AA STOOL』をデザインした鈴野浩一さんというふたりの建築家にその発想から行動に至るまでさらには社会に定着するまでの物語をお聞きしたいと思います
またこのトークショーは山形市とQ1とが主催する家具のデザインコンペ『街に置くベンチ』のオリエンテーションも兼ねていますこのコンペはまちの風景と人々の行動を楽しく変えてゆくようなベンチのデザインを広く募集するものでゲストのおふたりはこのコンペの審査員にもなって頂いていますこのクリエイティブ会議がまちで新たな活動にチャレンジしたい人や学生やデザイナーの皆さんへのメッセージとなればと思います」

というわけで3人の建築家によって「家具とまち」を中心に1時間半にわたって語られたこのクリエイティブ会議以下簡単にレポートしていきます

まず芦沢さん鈴野さんのおふたりからは「石巻工房」の誕生から現在に至るストーリーが語られました
2011年東日本大震災の津波によって被災した石巻沿岸部に縁のあった芦沢さんは復旧のために必要なものはなにかを考えた結果公共工房という「場」をつくりますそれが石巻工房のはじまり地域の人たちが自分たちの力で身近にある材料で必要なものを修繕したりつくったりするためのDIYの場でしたその後地元の工業高校の生徒たちと一緒に野外で使うベンチ(ISHINOMAKI BENCH)を制作野外映画祭というイベントで使用され自分たちでつくった家具がまちの新しい風景となっていきますまたボランティアとして石巻にやってきた世界的家具メーカーハーマンミラー社のスタッフと協業し地元の人たちとのワークショップを開催仮設住宅などでの暮らしに必要な家具を地域住民たちと一緒につくることでDIYマインドを広げるとともにそれらの家具が暮らしの中でさまざまに使われ地域に浸透していきます耐久性があり実用的でシンプルでどこか荒削りさもあるけれども味があるその家具たちは石巻工房という「プロダクト」として全国的に注目を集めるようになっていきやがて家具の製作と販売という事業となって育っていくことになるという物語でした
現在では石巻工房の家具は世界中に広がるまでになっていますが大切にしている理念のひとつが「Made In Local」というもの石巻で商品をつくってそれをわざわざ輸送するのではなく石巻工房のデザインを海外のパートナーにその土地でそこにいる人たちでそこにある材料でつくってもらうというやり方そこに石巻工房の原点であるDIYの精神が息づいているということでした

続いて芦沢さん鈴野さんからそれぞれに石巻工房とはまた別の「家具とまち」に関わるプロジェクトの事例紹介がありました
芦沢さんからは東京で設計したとあるコーヒーショップの店舗前広場にベンチを置いた事例についてそれまで誰もどう使っていいかもわからない殺風景だった公共の広場がその店舗空間となんとなくリンクするようなベンチを置いてみたことによって人々がコーヒー片手に気持ちよさそうにとき過ごす空間へと姿を変えたという事例でした
鈴野さんからはまちにベンチを置いていくプロジェクトの事例についてそれはベンチをつくってからまちに配置していくという通常のプロセスではなくまちのなかにベンチを置かせてもらえるスペースをまず先に見つけその土地の所有者に許可をもらうというプロセスを経たうえでそれぞれのスペースにちょうどいいベンチをつくっては配置していったというふつうとは全く逆のアプローチによってまちの風景を変えていった事例の紹介でした

そして最後に芦沢さん鈴野さん馬場さんの3人が審査員を務めるコンペ「街に置くベンチ」に参加する人たちへ考え方のヒントやメッセージが送られました

ベンチをただの家具と捉えることもできるしもっと色々なことをやれるなにかと見立てることもできますもしかしたら新しいベンチの構想にあたってはまず自分が暮らすまちにすでに置かれているアノニマスなベンチをリサーチすることからはじめるというやり方もあるかもしれませんまたベンチという公共物を置いていくとまちにリズムが生まれたり統一感が出てきたりすることから考えればベンチというのは小さな都市計画であると言えるかもしれません
製品として見れば構造や強度素材デザインなど考えるべきことはたくさんありますけれど木製ベンチをただつくればいいということではなく例えばそのベンチが置かれる環境のことそのベンチを使う人のこと……など想像すべきことはたくさんあるはずこのコンペの優秀作品は商品化が想定されておりその試作品をQ1の廊下などの敷地内や屋外に置くことにもなっているのでそれならQ1という場所のことを調べておくことも大切かもしれないし地元の素材を使えないかとか廃材をアップサイクルできないかなんて視点もありえるでしょうパブリックスペースに置いたら盗まれることも考えなければならないかもしれませんしそれを最初からある程度許容すると想定してもいいかもしれませんその考え方もやっぱり色々あると思います
もしかしたらネーミングが大事になるかもしませんコンセプトが明確に人に伝えられるものでないとプロダクトとして普及するものになりにくいしネーミングが決まった瞬間にベンチが「できた!」となる可能性だってありえるかもしれませんまたいったいそのベンチは誰のものなのかオープンシェアできたりするのかお金の仕組みはどうなっているのかなどシステムからデザインするような方向もありうるかもしれません個人がまちに関わる関わりしろそれがベンチであるという考え方もできるでしょう家で使う学校で使う道路で使うなど場所を拡張していくようなやり方もあるかもしれません
考え方は自由ですでも自由だからこそあえてなにか設定を与える制限を与えてしまうという方法もあるでしょう石巻工房は誰でも手に入れられるツーバイ規格の材料でつくれるようにデザインされていますがそれは被災を背景とした様々な制約があったからこそ生まれたとも言えます
……と色々考えることはありますがとはいえ気楽に考えることもぜひ大切にして参加していただきたいですシンプルに自分の部屋に置くベンチからはじめてみてもいいでしょう

というそんなメッセージでした

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です 

Q1チャンネルとは
Q1チャンネルは 株式会社Q1が運営するYouTubeチャンネルです ゲストを招いたトークセッションや 様々なQ1のプロジェクトなど 「山形×産業」の可能性を探るコンテンツを発信していきます