夜の学校 05_
中高生のための
政治学入門/
佐藤孝弘先生
Text: 那須ミノル
real local山形ライター。
https://www.reallocal.jp/yamagata
Photo: 三浦晴子

「夜の学校」05 レポート/「中高生のための政治学入門」佐藤孝弘先生
2025年8月30日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1 にて「夜の学校_05」が開催されました。先生は、政治家であり現山形市長である佐藤孝弘さんです。授業タイトルは「中高生のための政治学入門」。タイトルの通り、参加者すべてが中高生で、定員20名の席は満席となりました。
「夜の学校」は、クリエイティブをテーマとした、創造都市やまがたの市民学校です。優れた知恵やスキルやさまざまな得意技を持った方に先生としてご登壇いただき、授業いただくことを通して、生徒である私たち市民にその知恵を分けていただく、という座学の時間です。これにより、市民みんなでクリエイティブのちからを高めていこう、というものです。

この授業の内容について
この授業は、以下の3部構成で進められました。民主主義という政治のありかたやその優れた点などについて、また、山形市の市政において考えてきたことや実践してきたことについて、などが佐藤孝弘先生によりレクチャーされました。登場する具体的な政治思想や歴史などレクチャーでは説明しきれないところについては、各人がさらなる学びを自分で進められるようその扉となる参考図書が提示されました。また、小学生の頃から政治家志望であったという佐藤先生からは、この授業の生徒である若い皆さんにもぜひ政治家になることに興味を持ってほしい、という想いが語られるとともに、これから大人になってゆく皆さんに、どんなふうに学んでいってほしいか、どんなことを心に留めておいてほしいか、ということについてメッセージが贈られました。
1. 「民主主義」を語ろう
2. まちづくりを考えよう
3. 未来を創る皆さんへのメッセージ

興味深い論点や言葉など
第一部 「民主主義」を語ろう
“Democracy is the worst form of Government except for all those other forms that have been tried” というWinston Churchillの言葉を手がかりに、民主主義という政治のありかたが他の政治形態より「マシ」なのはなぜなのか、そして古代ギリシャにおいてプラトンが掲げた哲人政治という理想は一見すると大変素晴らしいようであるのに一体どこに問題があるのか等を考えてゆくなかで、政治リーダー交代のシステムが制度の中に内在していることこそが民主主義の大きな特徴のひとつであることが示される。そしてその前提には「どんな人間も間違えることがある」という人間観が潜んでいる、ということが明らかにされてゆく。
一方で、では、現代世界においては民主主義が広がるどころかむしろ権威主義的な国家が増えているのはなぜなのか。逆にまた、この日本において民主主義が安定的に運営されるに至ったのはなぜなのか、という疑問が生じる。日本の歴史を探ってみると、そこには民主主義が定着するための素地があったのだ、ということがわかってくる。
第二部 まちづくりを考えよう
市長とは、政治家であり行政の長。行政の長としての仕事とはいわば「都市経営」であり、山形市の長とは、山形市民の幸せと山形市の発展のために働く存在である。そこで重要なのは、そのまちにしかない特性を見極め、その特性を強みとしてさらに伸ばすということ。その見極めから、「健康医療先進都市」と「文化創造都市」という山形市の2大ビジョンが導きだされ、山形市はそのビジョンのもとにこの10年間、他都市でも類を見ないほどのさまざまな政策を繰り広げてきた。その積極果敢なチャレンジにより、人口減少率は比較的小さく抑えられ、また市民一人当たりの市税収入や一般会計当初予算額やふるさと納税寄付金額は増加を続けるなどの効果が生まれている。
しかし、そのように市として最大限の取り組みを行うことにも限界があり、この国の都市のありかたを国にも働きかけたいし、実際に働きかけを行なってもいる。この国がこれから目指すべきは、東京一極集中のようなありかたではなく、ドイツやアメリカのように、さまざまな都市がそれぞれに個性を持って輝くような多極分散国家であるだろう、と。
第三部 未来を創る皆さんへのメッセージ
「とにかく本を読もう。議論しよう」。興味を持ったらなんでも読んでみる、という姿勢を大切にしてほしい。若い時にしか読めない本がたくさんある。たくさん読んでいるという経験を蓄積することで、世の中でなにか新しそうな話題が出てきた時にも「これは過去にあった話に似ている」とわかるようになる。さらには友人などとたくさん議論をすることで、情報や思想にそう簡単に惑わされたりしない自分をつくりあげていけるはず。
そして「自分を磨こう。鍛えよう」。人生のなかでどんな選択をするにせよ、自分の成長につながる道を選んでほしい。失敗は必ずするだろうけれど、どんなに失敗を重ねても挫けることなく、果敢にチャレンジし続けてほしい。
そして最後に「志を立てよう。行動しよう」。政治家を目指すにせよ、そうでないにせよ、自分の軸となる志を立てて行動してほしい。自分をしっかりと磨きながら、人とのネットワークをつくっていってほしい。
どんな世界に進もうと、その世界に棲む魔物にやられないこと。ニーチェの「怪物と闘う者は、そのためおのれ自身も怪物とならぬよう気をつけるがよい。お前が永いあいだ深淵をのぞきこんでいれば、深淵もまたお前をのぞきこむ」という言葉を贈りたい。

佐藤孝弘(さとう・たかひろ)
政治家・山形市長 東京大学法学部卒業後、経済産業省に入省。中小企業庁にて税制改正などを担当。退官後、自営業を経て政策シンクタンク東京財団研究員として経済政策を提言。2011年9月、山形市長選挙に立候補し、次点。2015年9月28日、第18代山形市長に就任。著書に「M&A国富論」など。
Text: 那須ミノル
real local山形ライター。
https://www.reallocal.jp/yamagata
Photo: 三浦晴子