夜の学校 07_
うつわの歴史
––日本陶芸史を
私感で語る––/
深井聡一郎先生
Text: 那須ミノル
real local山形ライター。
https://www.reallocal.jp/yamagata
Photo: 三浦晴子

「夜の学校」07 レポート/「うつわの歴史 ––日本陶芸史を私感で語る––」深井聡一郎先生

2026年2月25日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1にて「夜の学校_07」が開催されました。先生としてご登壇されたのは、彫刻家であり、また、東北芸術工科大学教授・研究科長、やまがたクリエイティブシティーセンターQ1ディレクターである深井聡一郎さん。授業タイトルは「うつわの歴史 ––日本陶芸史を私感で語る––」です。
「夜の学校」は、クリエイティブをテーマとした、創造都市やまがたの市民学校です。優れた知恵やスキル、得意技を持ったかたに先生として授業いただくことを通して、生徒である私たち市民にその知恵を分けていただき、市民みんなでクリエイティブのちからを高めていくことをめざします。

1万5千年の壮大な歴史を駆ける
彫刻家として活躍されている深井先生は、陶を素材とした彫刻作品を制作されてきました。また、学生時代から陶芸に親しまれ、陶芸史や焼きものの技法を独学で学ばれてきたそうです。この授業では、日本の「うつわ」のはじまりから現代まで、以下の10の時代に分けて、その変遷を辿っていきました。
1. 縄文時代:粘土を焼けば陶になること 物々交換ゆえのプロフェッショナル
2. 弥生~古墳~飛鳥時代:定住~大陸から渡ってきたもの。窯の誕生(伽耶、百済、新羅)
3. 奈良時代:大陸の文化、政治。大仏と鉛(唐)
4. 平安~室町時代:六古窯。釉薬の誕生(宋、高麗)
5. 桃山時代:宋から李氏朝鮮。国焼の誕生と渡来人の焼物
6. 江戸時代:商人の時代、白の時代
7. 明治の時代:万博・文明開花。輸出陶器、工芸の誕生
8. 大正~昭和:サロンと民藝。桃山復興。思想「用の美」
9. 昭和:焼け野原から。オブジェとは。
10.昭和~現代:バブル~流行の循環

いまから約1万5千年前ごろの縄文の時代に土器が「焼きもの」として生まれ、はじめは「野焼き」だったものが、やがて大陸の技術や文化が渡ってきたことによって「窯」で焼かれるようになること。装飾的なところでは、「鉛」を用いた技術が生まれたり、六古窯とばれる窯が各地に隆盛した時代になると「釉薬」の誕生が見られたりしたこと。素材的には、「陶器」や、「炻器(せっき)」、そして「磁器」などへと新しいものが生まれていったこと。安土桃山の時代には「国焼き」が生まれ、そこに日本の陶芸のはじまりを見ることができること。江戸の時代になり、「白の時代」というべき白いうつわが隆盛したこと。鎖国を解かれた日本が西洋化の流れのなかで「芸術」「美術」「工芸」など新しい言葉がつくられていったこと。そして明治の日本は「焼きもの」を産業として世界に売り出していったこと、そこでは「過剰装飾」の傾向が見られたこと。大正から昭和にかけては、「桃山復興」があり、「民藝運動」が起きたこと。戦後の昭和には、「オブジェ」という既存の意味性を離れた焼きものが生まれたこと。バブルの時代にはマーケットにおいて再び「桃山復興」が見られたこと。その後には「白の時代」の再来があったこと。さらにその次には「過剰装飾」の再来が見られたこと。というように、いまの時代には流行の循環が起きていることが窺えること……。
こうしてうつわの歴史を巡りゆくことは、新しい技術や素材の発見や獲得によって、新しい色やかたちのうつわが次々に誕生していったという、うつわそのものの進化の連続と見ることももちろんできるわけですが、同時にまた、大陸の文化との関係性や、この国の政治との関わり、そして経済状況やマーケティングや流行、といったものを色濃く映しだしているとも感じさせるものであったように思われます。この授業を通して見えてきたのは「うつわから時代を読み解くことができる」ということではなかったか、という気がしてきます。
なお、今回の授業で紹介のあった「うつわ」となにがしかの接点がある商品が、やまがたクリエイティブシティセンターQ1の3階フロアにある「ROOTS & Technique the REAL store」にて販売されているとのこと。ご興味のある方は、ぜひお店に足をお運びください。
https://yamagata-q1.com/floor/3i.php

Text: 那須ミノル
real local山形ライター。
https://www.reallocal.jp/yamagata
Photo: 三浦晴子