Creative City Yamagata

食とデザイン
未来のヒント

2025.03.31.Mon

第16回クリエイティブ会議「食とデザイン 未来のヒント」レポート

2024年11月23日やまがたクリエイティブシティセンターQ1にて「第16回クリエイティブ会議」が開催されましたゲストは庄内・山形そして日本を代表するイタリア料理人奥田政行シェフモデレーターを務めたのはQ1ディレクターでもある東北芸術工科大学の中山ダイスケ学長です

やまがたクリエイティブシティセンターQ1にて奥田政行シェフ(左)と中山ダイスケ東北芸術工科大学学長(右)

「クリエイティブ会議」とはまちのクリエイティブと産業とをどうやって結びつけていけるのかそして持続可能な地域社会づくりにどのように繋げていけるのかその具体的な方法論や可能性を探ることを目的として先進的な活躍をされているクリエイターとQ1ディレクター陣がディスカッションする公開企画会議のようなもの

16回目となる今回のテーマは「食とデザイン 未来のヒント」ゲストの奥田政行さんは山形県鶴岡市の地場イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフでありその後全国さまざまな場所に誕生することとなる地産地消レストランの先駆者世界に名を馳せる料理人であり自身のお店だけでなく地域全体を元気にしてしまう飲食店経営のスペシャリストでありさらにはいくつものお店や商品のプロデューサーでもあり……という常人ならざる精力的な活躍をされています

さてこの会議ではそんな奥田シェフと中山学長とのあいだで約1時間に渡ってトークが繰りひろげられましたその内容はイタリア料理という枠をはるかに超え話題はあっちへこっちへそっちへとさまざまな方向に飛び跳ねつづけます

父親の大きな借金を背負った話資金がないなかで編み出された経営的工夫生産者の方たちとともに編みだした物々交換の経済お店の若い男女スタッフをくっつける方法歴史に学び未来を予測する話料理修行を2年でマスターする方法自分にとっての約束の地とはどこかという話イタリアンとは素材第一の料理であるという定義素材から見極める調理の熱媒体のことタンパク質とアミノ酸についての話題3つの素材から創造するおいしさの黄金法則について生産者の年収を増やすためにやれることそしておそらく世界一食材のバリエーションに恵まれた山形などなど……その話題の豊富さ考えかたの独特さ理論の独自性には圧倒されるものがありました

ここではそうした数々の話題のなかからいち参加者として特に強い印象を受けたポイントについて感想を述べます

調理の発想に至る素材分析の力

奥田シェフから食材というのはすべて地球上の生きものであることそして料理とはその生きものが生きているときには体験したことのなかった熱を水で(茹でる)油で(フリットにする)空気で(ローストする)などして加えるものであるというユニークな定義づけの紹介がありましたそれらの熱媒体のどれを選ぶかというとそれは素材を見て含まれる水分量や香りや可食部の大きさといった性質から適切な熱媒体を決めるというようなお話です

完成された料理を先に志向するのではなくまずは目の前にある食材の性格をしっかりと見極めることが大切だということそこで重要になるのは素材分析の鋭さでしょう奥田シェフは地元の野山を歩き回りながら野草や山菜を摘んでは食べて味を確かめていたというエピソードが有名ですがそうした食材の一つひとつをしっかり見極め香りを嗅ぎ分け味わうということをまるで野生の獣のように研ぎ澄まされた感覚をもって経験し身につけていったのではないでしょうかその素材分析ができてはじめて料理が導かれていくというそのベクトルのユニークさとそれを支える野生的な感覚に驚きを感じました

料理を言葉や数字や音符に変換する

奥田シェフと中山学長おふたりの話しぶりから終始滲み出ていたのが知識量の凄まじさですフレンチイタリアン洋菓子といったカテゴリーのそれぞれをいずれも2年間の修行でマスターしていったという奥田シェフはこのトークのなかで自身で描いた各料理の体系図を紹介されていました料理をメニューの名前で覚えるのではなくそもそもどんな料理なのか定義づけしどのような構成要素や組み立てによって成立しているのか体系立てて理解し図や言葉などに変換して明確化しそして基本的な技術を覚えるということの重要性が語られていたようですそれは「料理は見て覚えろ」というセリフが常套句となっている業界にあって特異な態度でありアンチテーゼかもしれません

料理は食べてしまえば残らないものである一方でおいしさの記憶としては後々まで残るものという話題も興味深いものでした特に音楽の楽譜のように料理を音符にすることができれば遠くに飛ばすことも可能になるというエピソードが気になりましたいったい料理の「音符」とはなんなのかいわゆるレシピとは違うのか興味をそそられました奥田シェフはその音符の発明により自身の元で技術を学んだ若い料理人に新しいお店に飛んでもらいその音符を送り込めば料理を奏でてもらうことができるというやり方によって遠くの街にプロデュース店をひらくことができるようになったというようなことをおっしゃっていました

料理という感性に依るところが大きいような仕事を積極的に言葉に変換すること突き詰めて考えること定義すること図表にすること音符に変えることそしてトークすること……そのアウトプットする創造力の大きさを感じました

繁盛店をつくり食の街をつくる

料理の話をしているのにも関わらずすぐに料理の領域を超えていくところも面白く感じました
たとえば100人の村に10軒のイタリアンがあればお客は10人しか来ないけれど100人の街で誰もやっていないたった1軒だけの店をやれば20%の人が食べたいと思っただけで繁盛店になれるという話題これはブルーオーシャン戦略であり経営論でしょうまた店を繁盛店にするためには街づくりからやらなければならないという話やプロデュース店を増やしていくことによって生産者の年収アップや後継者づくりに寄与することができるという話も料理人の枠を超えたスケールを感じさせました
おいしい料理をつくることと自分の店を繁盛させること生産者を支援すること若い人を育てることまちの未来をもっと良くしていくことが矛盾なく自然に繋がり重なっているのです

食のクリエイションがひらく地域の未来

昨今東京を中心とした都会では「山形」というと「おいしい酒おいしい米おいしい土地」というような「おいしいイメージ」が定着しつつあるという話題もありましたしかしそうした状況にもかかわらず山形に暮らしている地元の人たちは「置賜が村山が最上が庄内が」と自分たちの小さなエリアの縛りばかり意識していたりこだわっていたり「山形なんてまだまだ」と勝手に思い込んでいるフシがあってせっかくのチャンスなのに残念というような指摘です

奥田シェフは山形は「おそらく世界一の食材のバリエーションの豊かさに恵まれている」ということをおっしゃっていましたそして「そのことに誰も気づいていない」とも中山学長はこの山形は「おいしい街」としてのアイデンディティを創出できる可能性が十分にありうるしサンセバスチャンのように世界的な食の都のようなまちになれる可能性も十分ありうるのだというようなこともおっしゃっていました

食をクリエイションすることは食材を発見していくことでもありそこにある水や土や歴史や文化そして風土といったさまざまな物語を学び直し紡ぎ出すことでもありますまた食の繁盛店をつくりだすということは街のにぎわいを生み風景を変え人の動きを変化させ農業や観光に好影響をもたらし新しい経済が生まれ新しい循環をもたらす可能性をつくりだすことでもあります

今回のこのクリエイティブ会議から見えてきたものは食のクリエイションという切り口から見たときこの山形という街のもつポテンシャルはとても大きいということを再発見する必要があるということではなかったでしょうかそしてその先に街の未来がひらかれる可能性があるということでありここに生きる私たち一人ひとりがそのことを信じられるのかが問われているのではという気がしました

終わり

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です 

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