Creative City Yamagata

アートとテクノロジーの
《あそび場》

2021.03.31.Wed

第7回 クリエイティブ会議「アートとテクノロジーの《あそび場》」レポート

2021年2月オンラインにて第7回クリエイティブ会議が開催されました

今回のテーマは「アートとテクノロジーの《あそび場》」ゲストはアーティストユニット「TOCHKA」(トーチカ)のお二人でモデレーターは東北芸術工科大学のアイハラケンジ准教授ですTOCHKAの展覧会「Playground 2.0」が開催中の「東根市公益文化施設 まなびあテラス」からライブ配信で行われました

TOCHKAの代表作といえば「PiKAPiKA」(ピカピカ)空中にペンライトの光で絵を描くことでアニメーションをつくるというもの作品動画を見ていると大人も子どもも言語の壁を超えて遊ぶそんな心温まる風景があります

これまでTOCHKAがつくり上げてきたアートとテクノロジーの遊び場そして開催中の展覧会も参照しながらQ1がどのような「あそび場」(=Playground)となっていくのかを議論したトークを振り返っていきます

TOCHKAのナガタタケシさん(映像作家大阪電気通信大学准教授)とモンノカヅエさん(アニメーション作家)真ん中にあるマシンは展示で活躍した自走型遠隔操作ロボット

TOCHKA(トーチカ)
京都を拠点に活動する映像作家・アニメーション作家1998年より「トーチカ」としての活動を開始2004年より長時間露光写真とストップモーションアニメーションの手法を組み合わせライトを使って空中に線を描くことでアニメーション制作を続けている近年は実験的なインタラクティブ映像の開発による鑑賞者と映像のかかわり方についての研究なども行っている

世界共通のコミュニケーションツール 「ピカピカ」

大学の同級生で1992年から20年ほど活動を続けるTOCHKAのお二人映像と絵画の可能性を出発点に活動を開始し立体物のインスタレーションをつくっていましたそこから光で絵を描くことにシフトし徐々にいろんな人に参加してもらい場づくりをすることや参加型アートという文脈を取り入れていったといいます

「ピカピカ」は2005年に誕生した作風ですその代表的なムービーがこちら

イラストレーターやアニメーターなどのクリエーターが集まりみんなでライトを持って動き回り生まれた作品制作に疲れた人もいる中で「制作の楽しさの原点に戻ろう!」との思いからスタートしたといいます

「常に『実験』がベースにありましたうまくいかなくてもいい『遊び』や『ふざけること』にフォーカスした結果『つくることって楽しい!』と思い起こすようなプロジェクトになりました」(モンノさん)

その後「ピカピカ」は世界から注目を浴び日本全国世界各地万博や映画祭小学校の授業に組み込まれるなど世界中を飛び回り子どもたちと一緒にワークショップやプログラムを行ってきました

オランダ・アムステルダムで行ったプロジェクトアムステルダムの住宅は窓が大きく窓から生活の様子がとてもよく見えるそんな街並みから着想を得て描くフレームは窓枠のデザインとなっている

2019年11月末から3ヶ月間はアムステルダムで開催されたライトフェスティバルに参加しました運河に大型インスタレーションを設置するというイベントです

その一環でアムステルダム市と協働して市内の小学校で約900人の子どもたちを対象にワークショップを開催テーマは「Neighbors(隣人)」子どもたちに「隣の人とどんな対話をするか絵で表現してください」とお題を出しフレームに子どもたちがライトペインティングで描いていきました

「アムステルダムには多民族が暮らしダイバーシティであることに敏感な街言語を使わずにどのように隣の人と会話するかプロジェクトを通じて子どもたちと一緒に考えていきました」(モンノさん)

身近な素材で遊ぶ

TOCHKAはライトペインティングの絵筆となるライトペンの開発も行っていますその作り方は小中高の技術や図工の教科書にも載っています

「できるだけオープンソース化してマニュアルを見れば誰でもつくれることが理想です」とナガタさん100円均一で買えるUSBでつながる電球型ライトを流用して他の部分を3Dプリンタのパーツや基盤付きのキットと組み合わせてひとつのライトをつくるという試み独自のマニュアルで120個のライトペンをつくりそれを使ってワークショップを行いました

ライトや虫眼鏡を使って作品をつくるまるで裏技のように意図しない使い方をされたときに『遊び』の感覚が出てくるのかもしれません

今となっては気軽に動画を撮影できる時代ですが15年以上前から高額なセットや機材に頼ることなく身近にあるものを使って動画作品をつくり配信しているのも『遊び』の要素と言えるのでしょう

2016年には虫眼鏡を使って太陽の光で木材に絵を描くプログラムを山形・東根市で実施これもまた身近にあるもので楽しむプロジェクト(撮影:三浦晴子)

TOCHKA Playground 2.0 ー見えざるものと王子さまの旅ー

2017年に東根市まなびあテラスで開催された個展「Playground」を引き継ぎ同館にて「TOCHKA Playground 2.0 ー見えざるものと王子さまの旅ー」(会期:2021年1月9日~2月28日)が開催されました

会場内でスマートフォンやタブレット端末を利用してInstagramのアプリ越しに作品を鑑賞しAR(拡張現実)技術を使った作品などインタラクティブな作品で構成されています

「ARはテクノロジーを通じてどんどんリアルに近づこうとしてる技術これからリアルとバーチャルの境目はどんどんなくなっていくその過渡期として子どもたちにこの技術に触れてもらえたら」とナガタさん(撮影:三浦晴子)

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる『星の王子さま』(内藤濯訳岩波書店刊)を原作とした物語をTOCHKAが新たな視点で展開するプロジェクト「王子さま」という名の自走型遠隔操作ロボットが展示の見方を説明したり来客者をナビゲートしてくれます

「コロナでステイホームが長かったので親子で楽しめる新しい読書体験が提供できればそして新しい絵本の読み聞かせのかたちを提案したいことがこのプロジェクトの出発点でした」(モンノさん)

トークイベントにも参加していた「王子さま」こと自走型遠隔操作ロボットロボットに映る映像の配信も行われた距離が離れても繋がっていくことの大切さを伝えたかったという(撮影:三浦晴子)

「『見えざるもの』が今回の展覧会のテーマです星の王子さまの物語にも出てくる言葉ですが見えるものだけがすべてではありませんその先を想像する違う見方をしてみる隠れている意味について考えてみるそんなことに触れてみてほしいという思いを込めています」(ナガタさん)

Q1における「アートとテクノロジーのあそび場」

最後にトークテーマはQ1へこれまで子どもたちと一緒にプロジェクトを行ってきたTOCHKAのお二人とアイハラケンジさんと3名でQ1の未来について議論していきました

アイハラケンジさん(左)とTOCHKAのお二人背景の羊の絵は角度によって見え方が変わるだまし絵のような作品でワークショップから生まれた

アイハラ Q1という場所を舞台に子どもたちとどんな遊びができるのかを考えていきたいと思います子どもたちだけでなくもちろん大人たちや高齢者たちも行き交う場になればと思っているのですが

モンノ 全員が楽しめたらいいですよね「子育て」という言葉の響きが重荷に聞こえるときがあります子どもたちが遊んでいるけど大人たちも遊んでいるような空間がつくれたらきっといい場所になりますよね

例えば子どもが遊んでいる横で大人がワインを飲みながらそれを眺める子どもたちが触っても暴れてもそれをほったらかしでもOK誰でも自由に見られる展示会場をつくるとかおもしろそうです

モンノさんは「アートをやっている感覚があまりない」というどうやってコミュニケーションをつくるか場をつくるかをデザインしていきたいと話す

ナガタ 高齢者の方も来られるイメージなのですね

アイハラ 山形市において第一小学校は歴史ある小学校そこに通っていたり関わってきた方々も巻き込んでいけたらと思っています子ども大人高齢者の方と3世代がなにか一緒につくったりコミュニケーションすることができないかな?と考えています

ナガタ ゲートボールをアップデートして子どもも一緒に遊べるゲートボールを考えるとかどうですか?公園で毎日のように高齢者の方がゲートボールをやっている景色を見ているときっとおもしろいんだろうなと思うんですよね

モンノ 子どもも一緒にみんなでやればいいのにって思いますよね

アイハラ 今回の展覧会であれば子どもと大人の共通のコンテンツとして「星の王子さま」がありますよねQ1の共通のコンテンツとしてゲートボール

ナガタ 例えばドッジボールとゲートボールゲートボールの間をつくるなどルールを変えるだけでいろんなワークショップができますよね

アイハラ お二人の話でおもしろかったのが活動のすべてが身長や運動神経などの身体性を問わないこと年齢も問わずみんな一緒に遊べますよね

モンノ もしかしたら前提条件として年齢を分け過ぎなのでは?と思うんですよね盆踊りみたいにいろんな世代の方が一緒に踊れるようなものをみんなでつくり上げる年齢もジェンダーも関係なしどこかで区切るから溝が生まれるし一緒に取り組めたほうが楽しいんじゃないかなと思います

アイハラ 最後にトーチカの今後の展開について教えてください

ナガタ 二人それぞれに進んでいるのですが僕は映像のアップデートを考えていて来年にはライトペインティングの発展形をお披露目したいと思っています

モンノ 私は毛糸で絨毯をつくってそれでアニメーションをする「アニメーション絨毯」をつくりたいと思っています山形県はニットの生産が盛んですよね不要になった毛糸をこの期間中に集めさせていただいていてそれを使って大きな絨毯をつくろうと計画中です“ストップモーションアニメーション絨毯”として一枚づつ撮影するとアニメーションになるアプリと絨毯を準備しています

アイハラ どちらも楽しみですねQ1ができたらぜひワークショップを開催いただいたり子どもたちと遊んでいただきたいです

モンノ ぜひその絨毯を置かせてください!

ナガタ 遊びに行けるのを楽しみにしています

アイハラ 今日はありがとうございました

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です 

Q1チャンネルとは
Q1チャンネルは 株式会社Q1が運営するYouTubeチャンネルです ゲストを招いたトークセッションや 様々なQ1のプロジェクトなど 「山形×産業」の可能性を探るコンテンツを発信していきます