Creative City Yamagata

TURN(ターン)とプロジェクトFUKUSHIMA!に見る、多様な〈個〉の出会い

2020.10.26.Mon

Text: 那須ミノル
Nasu Minoru/reallocal山形ライター。 Uターンして10年。 春は種まき、 夏は茶豆収穫、 秋は芋掘り、 冬は雪かき。 四季を味わう暮らしです。

左より馬場正尊さん深井聡一郎さん森司さん中﨑透さん

第4回クリエイティブ会議レポート

山形ビエンナーレ2020会期中の9月21日Q1クリエイティブ会議第4回「「TURN(ターン)とプロジェクトFUKUSHIMA!に見る多様な〈個〉の出会い」が開催されました

ゲストはTURNプロジェクトディレクターを務める公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京事業推進室事業調整課長 森司さんプロジェクトFUKUSHIMA! で福島大風呂敷など美術部門のディレクションをしている美術家・中﨑透さんのおふたりモデレーターはQ1プロジェクトのボードメンバーである深井聡一郎さん(株式会社Q1取締役・東北芸術工科大学教授)と馬場正尊さん(株式会社Q1代表取締役・東北芸術工科大学教授)が務めました

山形ビエンナーレ2020のプログラムはオンライン配信となっておりこのクリエイティブ会議もまた東北芸術工科大学内に設置されたスタジオからオンライン配信されました

Q1プロジェクトについて

山形市中心街にある山形市立第一小学校旧校舎(現まなび館)を創造都市拠点として再整備する「Q1プロジェクト」が現在進行中です2017年にユネスコ創造都市ネットワーク映像部門に加盟した山形市はまちに蓄積されたそのクリエイティブの力を地域の持続的発展に活かしていこうそして第一小学校旧校舎をその拠点として活用しようと計画2022年度より本格稼働予定です

とはいえ創造都市の拠点としてそこがどうあるべきなのかそこには何がありどんな楽しみがありどんなふうに市民に開かれどんなふうに運営されるのが良いのかというのはそれ自体非常にむずかしいクリエイションですそこでQ1プロジェクトではそうした姿や方法論を議論・検討しインストールしていく過程も実験フェーズとして位置付けています

クリエイティブ会議はまさにその検討・実験フェーズにおける具体的なコンテンツのひとつであり独自の方法論を持ったゲストを呼んでの公開企画会議の場これまでもクリエイティブ会議ではユニークな方々をゲストとしてお招きしその経験や知見を集めて来ました

これまでのクリエイティブ会議のアーカイブはこちら

Q1プロジェクト実験フェーズにおける構想

さてボードメンバーからゲストのおふたりに提示されたのはこれまでのクリエイティブ会議などを通して現在構想されているQ1のコンテンツイメージについて

テーマとなるのは「クリエイティブと地域産業を暮らしで結ぶ」というもの山形にすでにあるクリエイティブを地域のビジネスとマッチングさせ新しいクリエイティブ産業を生み出すようなイメージそれをこれまで「まなび館」として利用されてきた1F空間のみならずこれまで閉鎖されて来たまるで廃墟のような荒々しい雰囲気を放つ2F3Fの空間的魅力をも活用しながらやっていく

そのとき「市民に開かれたものにする」というのが大事なところでクリエイティブやアートというキーワードを掲げることによって一部の人間しか楽しめないようなものになってしまうことにならないよう多くの市民が気軽に利用し楽しめる施設にすることは重要なポイントとなるそのためには1Fから3Fまでの巨大な空間をどんな店どんな空間どんな利用方法で満たしていくかを考えた時に日常的であることつまり「暮らし」というのが重要なキーワードとなるのではないか

例えば市民に日常的に利用されるようなグロサリーとかデリカフェやパン屋さんのようなショップまた例えばクリエイティブに触れられる学童保育のような場所「暮らし」という切り口からはそんな空間利用が想定されうるかもしれない

もちろんクリエイティブな「楽しみ」も感じられる空間でありたい例えば山形国際ドキュメンタリー映画祭との連動映像編集の技術が学べる空間や映画の試写室があるのもいい映像だけでなく全国屈指のオーケストラである山形交響楽団とのコラボなど音楽での楽しみも感じられたらいい

さらには「仕事」や産業という切り口も重要アーティストたちのオープンスタジオでは作品がリアルタイムで制作されたり出来上がった作品がダイレクトに販売されたり地域企業を巻き込んだシェアオフィスがあったり学生たちと企業とのマッチングの場所になったり新しい商品やサービスが生まれたり…と

そんな構想イメージがボードメンバーから語られたのちゲストおふたりとのフリーセッションが始まりました以下いくつかの要点でレポートします

ゲストからのアドバイス&フリートークの要点

1)軸をあえてズラしてみることも

しっかりと機能を詰め込むことはいいことだけどちょっと中心的な軸とはまた違う軸を設定しておくことも大事かもというようなコメントは中﨑さん例えば屋上に露天風呂を作ろうとか中庭にヤギを飼おうというような(ちょっと突飛なあるいは直感的に面白そうな)ことを仮に設定してみるそういうちょっとズレた軸をあえて用意してみることでじゃあヤギのドキュメンタリー映像を作ろうとかじゃあプロジェクト会議をやろうとかいう動きが生まれ渦となってそれが中心的な軸と紐づいて面白くなっていくかも

2)余白を残した中間支援的な空間づくりを

建物のポテンシャルはすごく感じたけれどちょっと現状のコンテンツイメージだと『密』感があるような気がしたとのコメントは森さんからTURNプロジェクト(※)ディレクターでありアーツ千代田3331(※)の店子でもあるという森さんはご自身の経験からこういう場所では最初から想定されてはいなかったいろんなニーズが出てくるものだとの持論を展開みんなで会議をやるスペースがほしいとかみんなでライブする場所がほしいとかそういうことが後から生じてくるものだしまたそこを借りていない人たちも使える場所とか地域に関わる人たちが使える空間というのを用意しておくことも大切そういう余白空間的な中間支援みたいなことを考えるのがいいのでは

※TURN:障害の有無世代国籍住環境などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を表現として生み出すアートプロジェクトhttps://turn-project.com/

※3331 Arts Chiyoda:旧千代田区立練成中学校を改修し誕生したアートセンター2010年開館現代アート建築デザイン身体表現から地域の歴史・文化まで多彩な表現を発信する場となっている地域住民や近隣の子どもたちとのアートプロジェクト地域行事への参加なども行われており廃校をアートの文脈で蘇らせ街にひらくという意味ではQ1プロジェクトに近い先行事例とも言えるhttps://www.3331.jp/

3)オンラインとリアルのハイブリッドな空間利用

また森さんからはアーツ千代田3331でアーカイブに使っていた場所を常設スタジオに変えたというご自身の経験談も語られましたコロナ前の「とりあえずリアルに集まる」という前提が壊れこれから先は配信型のものとリアルに集う型のものとのハイブリットなものがデフォルトになる時代が来るからそれに向けたチャレンジをしてみたとのことそれはラジオの公開収録みたいな場所カメラやマイクを用意し自分たちで司会し画面切り替えたりしながら配信型の講座をやったりしているUDトークによってリアルタイムで画面に文字を表示させルため耳で聞こえなくとも目で情報が読めるし災害時にはそこが情報配信基地にもなるまさにQ1でも展開できそうな話題に

またそのようにオンライン放送をやってみると今度はそこに関する契約的なことの準備が必要だとわかるともコンテンツを再放送するときに発生するお金や権利とかそういう契約に関する法的な確認なんていうのも早い段階から整備しなければならない

4)プロジェクトFUKUSHIMA!から学ぶみんなを巻き込むチカラ

中﨑さんからはプロジェクトFUKUSHIMA!(※)における「大風呂敷」の話3.11原発事故後の福島で1万人規模の音楽フェスを開催したこのプロジェクトにはネガティブな言葉として世界に広まってしまったFUKUSHIMAを文化の力でポジティブな言葉に変えたいという想いがあったまるで大風呂敷を広げたような話だけどそれならいっそ実際に大風呂敷を広げようぜとリアルな大風呂敷作りがはじまるこれはフェスの際ブルーシートの代わりに敷くという実用的な使い方を想定してのものだったがその風呂敷作りのために多くの人が倉庫に集い風呂敷を縫い合わせそして当日大きな風呂敷を広げそこにたくさんの市民が腰を下ろしてフェスを楽しんだことからやがて大風呂敷はプロジェクトFUKUSHIMA!のアイコンとなりその後東京ほか全国各地で展開されたプロジェクトFUKUSHIMA!のシンボルとも推進力ともなっていったという話

そんな解説を中﨑さんがした後にはなぜこれほどたくさんの人を巻き込むことができたのかどうやったらたくさんの市民を巻き込めるのかとボードメンバーから質問がそれに対する中﨑さんからの回答は人がいろいろやれる関わり白を作るということかもしれないということ風呂敷を縫うために人が集まるのもまたフェスの一部なのだお客さんとしてではなく自分ごととして参加してもらえたからだろう

(※)プロジェクトFUKUSHIMA!についてはこちら http://www.pj-fukushima.jp/  
またreal local記事はこちら https://www.reallocal.jp/56453

5)非日常だからこそ参加したくなる

風呂敷を縫うというのは日常ではなく非日常であるということが多くの人が参加するポイントになったのではないかという指摘は森さんから風呂敷を縫うなんてことは自分の普段の暮らしにはないけれど行為としてはシンプルで難しいことでもなくそれでいて参画して仕事するとそれなりの充実感も得られて満足感があるまた風呂敷を縫うための作業場として未利用となっていた倉庫が使用されたりしていたというのも象徴的でそれもいわばたくさんの人が入れる余地がそこにあったということではなかったかプロジェクト的にもそして空間的にもたくさんの人が参加できる余白があったということがポイントなのだ

その誰しもが入りうる空間的余地そういう空間的な中間支援とでもいうべきものがQ1にあってもいいのではないかいつでも使い方を変えることのできる余白の空間があることによってそこにドンドンいろんなものが盛り込めていけるのだから

6)マイクロプロジェクトとその持続性

Q1は問い続ける場所完成されたハードがただ存在するような場所ではなくソフトによっていつも動いている場所でありたいいつも更新し続けることのできる場所であるのが理想的ではそういう場所であるためにはどうするのか

Q1を考える上で規模感のイメージは重要かもしれないという議論もありました中﨑さんからは地元で実際に動いている人たちの共犯関係みたいなものの存在がとても重要という指摘がありました誰に言われなくとも俺はこれやるよって覚悟している人間が一人いるだけでプロジェクトというのは動くものだとも森さんもその意見に頷きながら大きいプロジェクトは金があればできるけど小さいプロジェクトはハラをくくっていなければやれないとコメント

レポートは以上です

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です※クリエイティブ会議は 山形市「令和3年度やまがたクリエイティブシティセンターQ1運営事業業務委託」の業務の一つである「シティブランディング業務」の一環として実施しています 

Q1チャンネルとは
Q1チャンネルは 株式会社Q1が運営するYouTubeチャンネルです ゲストを招いたトークセッションや 様々なQ1のプロジェクトなど 「山形×産業」の可能性を探るコンテンツを発信していきます

Text: 那須ミノル
Nasu Minoru/reallocal山形ライター。 Uターンして10年。 春は種まき、 夏は茶豆収穫、 秋は芋掘り、 冬は雪かき。 四季を味わう暮らしです。