Creative City Yamagata

あそびとまなびが地域の未来をつくる

2021.02.17.Wed

第6回 クリエイティブ会議「あそびとまなびが地域の未来をつくる」レポート

「クリエイティブ会議」とは第一小学校旧校舎を創造都市やまがたの拠点として再整備していく「Q1プロジェクト」にまつわるシリーズ

2021年1月オンラインにて第6回クリエイティブ会議が開催されましたテーマは「あそびとまなびが地域の未来をつくる─『ただのあそび場』から生まれるクリエイティブと地域経済─」

ゲストは秋田県五城目町にて「ただのあそび場」を運営する丑田俊輔さんモデレーターはアイハラケンジ 東北芸術工科大学准教授と馬場正尊 東北芸術工科大学教授です

「ただのあそび場」とは秋田県五城目町の空き物件をリノベーションしてつくられたスペース子どもたちだけでなく大人も自然に集まる地域のコミュニティスペースとなりこの場所から小さな経済が生まれ五城目町にはさらに新たな動きが生まれ始めています

今回は丑田さんからこの場所が生まれた経緯やその運営方法そして地域に起きた変化や現在進行形の取り組みについてお話をうかがいました

山形市やQ1プロジェクトに多くの気づきをもたらした1時間半前半の丑田さんによる五城目町のプレゼンテーションと後半のクロストークのそれぞれをダイジェストでお届けします

丑田俊輔(うしだ・しゅんすけ)さんハバタク株式会社代表取締役・シェアビレッジ株式会社代表取締役・プラットフォームサービス株式会社取締役

子どもから大人まで
遊び学び続ける地域社会を目指して

秋田県の中山間地域に位置する五城目町人口は約8,300人で古くからの朝市が残る味わい深い営みがある町です会津若松市に生まれ東京の下町で育ちのちにさまざまな教育事業を展開してきた丑田さんは2014年から五城目町で暮らし始めました

しばらくして築138年の茅葺きの古民家と出会い2015年には「シェアビレッジ」を開始古民家を守り活用していくシェアコミュニティをつくり「村民」という名のメンバーで「年貢」という名の年会費を納めたり「寄合」という名の集いをしたり都会と田舎の二項対立を超えて学びと遊び地域経済が混ざり合っていく活動です

まちで活動する中で中心市街地にも変化が起きはじめました520年以上続く朝市が年々高齢化し出店数が減る中で地域の女性たちが動き出し日曜日の朝市開催日を「ごじょうめ朝市plus+」と名付け新たな挑戦の場に若い人々も出店者となり野菜や山菜だけでなくお菓子や雑貨などさまざまなものを売ってみたり表現する場となり子どもたちも商売体験をしたり通りにいけば友達と出会えたりと子どもから大人までの“地域の遊び場”にもなっていきました

「朝市プラス」の風景五城目町の中心地を貫く通りで開催されている

この経験を通じて丑田さんは「このような遊ぶ環境が日常にあればいいのに」と思い始めますというのも学校の統廃合によってスクールバス登校が増えたり車社会化や社会情勢の影響も相まって放課後の町には子どもがあまりいない状況商店街や野山で子どもたちが育つ風景を思い描いていたところ朝市通りに元スポーツ用品店の空き物件を発見しました

地域の人が集まり即興で大工さんたちとDIYして2017年には「ただのあそび場 ゴジョーメ(以降:遊び場)」が誕生豪華な遊具や設備はありませんそして無料「ただで遊べるただの空間」だといいます

完成後も家具や雲梯(うんてい)など子どもたちや地元の職人さんなどにより空間が造作されていきました運営はボランティアで地域の方や親御さんが見てくれていたり丑田さんや社員が仕事しながら見守り怪我がないよう最低限の注意を払いつつも基本的にはノールール自由に遊び学び合う寛容性を大事にしています次第に子ども同士で安全策を考えたり掃除したり自分たちで自治していく風潮が見られていったそうです

遊び場ができた翌年には1階にカフェがオープンこうした動きも相まってここ数年には新たなお店や工房酒蔵の交流拠点など遊び場の徒歩圏内が徐々に活性化しています

「ただのあそび場」現在(2021年2月時点)はコロナ渦により町民限定で鍵をレンタルして使用中

その翌年からは小学校の建て替えを機に町民参加型で未来の学校をデザインする取り組みが進んできましたテーマは「越える学校」子どもと町民が偶発的に出会えるように小学校の図書室と地域の図書室を融合したエリアが学校の真ん中に置かれています

さらにシェアビレッジでも新たな動きが進行中「村3.0」として村のようなコミュニティを通じて公でも私でもない「共(コモン)」の領域を暮らしの中に増やすのがポイントですみんなでスキルや資源を持ち寄り古民家や山食堂や住宅など様々なコモンズ(共有資源)を共同管理してシェアしていこうというもの遊び場もまさにその一つの形です

それを後押しするのがテクノロジーの力「村テック」と丑田さんは名付け村民が自治するためのアプリやウェブサービスを開発しています

2020年12月からプラットフォーム「Share Village」β版が開設された https://sharevillage.co/

最後に丑田さんは「プレイフル」というキーワードを示してくれました

「プレイフルな気持ちを原動力に遊び仲間が集い新たな価値やコミュニティが生まれていきますそれがほかのコミュニティと繋がり大きな生態系となっていくそしてすべての人がプレーヤー(Player)となっていくこれからはそんな遊びからはじまる経済が育まれていくんじゃないかなと思います」(丑田さん)

モデレーターの馬場正尊さん(左)とアイハラケンジさん(右)ともにQ1プロジェクトのボードメンバー後半は3名でのクロストークへ

人を動かす素直なコピーライティング

馬場 いやぁすごかった人口は約8,300人の五城目町に未来を見ましたねQ1プロジェクトではアフタースクール事業や教育事業も計画していますそのヒントを求めてここからは丑田さんにさらに話を聞いていきたいと思います

アイハラ まずはプレゼンを受けての感想になりますが丑田さんは名コピーライターですね言葉をつくって社会をドライブさせていく言葉に余白があって自分なりにいろんな意味付けができるし実に人を動かすコピーライティングだと思いました

馬場 子どもでもすぐわかる言葉で本質をついていますよねコツはあるのでしょうか?

丑田 最近おやじギャグなのではないかと危機感があるのですが(笑)以前は東京でコンサルをしていて横文字に脳を支配されていた時期もありましたいまは身体や地域の暮らしの中から言葉が生まれている気がします

馬場 五城目だから生まれる素直なフレーズなんですね

アイハラ Q1でガチガチに考えすぎちゃうことを引き戻してくれた気がします

馬場 計画しようとするとつい余白を埋めたくなってしまうのですが五城目町には適度な余白がありますよねどのようなさじ加減なのでしょうか計画的な無計画なのですか?

丑田 計画的な無計画ですね「その場がどうありたいか」という意思は大切だと思いますときには計画的なプログラムも大事だし自然発生的なストリートでの学びも大切いろんな場があったほうが町にとっていいことだと思っています

アイハラ 全体としてエコシステムや生態系をどうつくるかが考えられていますね贈与経済か貨幣経済か2択にならずバランスをとっているそこに鍵がある気がします

丑田 暮らす場所や学ぶ場所貨幣や贈与など経済圏を自分で選択できたりハイブリット化できるのはインターネットをはじめとしたテクノロジーが進化しているからこそ生まれてきた領域だと思います

「ただのあそび場」から生まれる小さな経済

馬場 きっと誰もが興味を持つポイントなので聞いてみたいのですが「ただのあそび場」は経済的にはどんな仕組みで動いているのでしょうか

丑田 初動は自社投資とクラウドファンディングと新規事業開発の補助で合計300~400万あとは地域からの物資やスキル提供で育っていきました最初はR&D(研究開発)をかねて社員を置いて経過観察していましたがそれ以降は人件費などの固定費は出ていません

わずかな家賃負担がありますが田舎町の遊休不動産ならではの圧倒的な安さを前提としつつ地域からの募金や有料イベントでの使用費そのほかコンサルのご依頼を受けてたまに貨幣が発生することもあります遊び場の収益は大体とんとんですが稼ぐことが最優先ではなく町にあり続けることが重要だと思っています

馬場 会社としてR&Dを兼ねたり地域に遊び場を提供したりといろんな効果があるここだけで経済を完結させようとしていないのですね

丑田 これは一例ですがどこかの商店街で商店主たちがみんなでお金を持ち寄って子どもたちが遊べる場所をつくったとしてたとえそこ単体で収益が上がらなくても通りを歩いて楽しむ人が増えお迎えに来た親御さんや子どもたちが商店街で買い物していけばOKなわけです地方では山も空き家も土地も値段が下落しているので様々な遊びを生み出せる優位性があると思います

いろいろな人が関われる余白

アイハラ 「越える学校」についてもお聞きしたいです偶発的な出会いをつくっていくことがすごく心にささってQ1でもそれをつくれるといいなと思いました

丑田 秋田県には「教育留学」という仕組みがあります移住や転校しなくても数ヶ月間だけ秋田に住み地域の学校に通えるというものこれから多拠点居住に伴う多拠点教育が増えると思うのでこの学校もそれを受け入れる土壌になっていくはずですシェアビレッジも同じですが適度に“外来種”が混ざることで揺らぎを与えることが大事だと思っています

馬場 遠くから人を呼ぶには求心力が必要だと思います五城目町がこんなに人を惹きつけているポイントはどんなところにあるのでしょうかプロジェクトをやる上でどんなことを意識していますか?

丑田 いろんな人が関わって誰が中心かわからないくらいがちょうどいいのだと思います最初に火付け役がいるのはいいと思うので徐々に周りの人がそれぞれ自由に振る舞い関わっていけることが大切朝市では女性4人が火付け役になってくれたのですがいまでは出店者も増え誰が仕掛けているのかわからないような状態でカオスな雰囲気になっています

馬場 丑田さんのプロジェクトに対するスタンスは一切”オラオラ感”がないですよね一人のカリスマで進めている感じではないリスクはとっていても少し引いているのが一貫した質感でそれが現代という感じがしますね

コミュニティとデジタルの関係

アイハラ 「シェアビレッジ」についてもう少し詳しく聞かせてください

丑田 2015年頃から村民を増やしてみんなで古民家をシェアし全国いろんな場所に田舎が持てる仕組みができればと考えていたのですが人数が増えていくほどコミュニティの手触り感は薄れ1000人超にもなってくるとサービスとする側と受ける側が分かれてしまうことがわかってきました

なので一つのコミュニティを際限なく拡大させていくのではなくリアルとバーチャルが融合しながら小さな共同体が組成されてそれぞれが思い描く暮らしをつくれたらいいなと思いました小さな村的なコミュニティが自律的につくられていくイメージです

それを後押しするためのインフラをつくろうといまエンジニアのチームと一緒にシステムを開発していますサブスクリプションで年貢プランをつくれたりコミュニティ独自のコインを発行したり

馬場 お互いの顔が見える適度なサイズのコミュニティを形成することをサポートするシステムというわけですね貨幣と贈与が混ざり合うシステムであり拡大し続けるのではなくある程度のサイズで止まることを目指しているこれはすごい発明ですね

丑田 プラットフォーマーが中央集権的に展開する構図ではなく「プラットフォームコーポラティブ」という概念を取り入れてみましたユーザーもプラットフォームに共同所有者として議決権を持てるような新しい組織設計にトライしています

馬場 古民家や遊び場などリアルな空間で得た実感値をアプリやデジタルに取り込んで仕組み化しているように感じますだから肌感覚があり説得力もありますよね

アイハラ 実際に五城目町に見に行きたくなりました具体的に参考にしたいですQ1の舞台である旧第一小学校の隣には現役の小学校があるので大人も子どもたちと一緒に楽しめる場になりそうです

馬場 今日は本当にたくさんのヒントをもらいました丑田さんの話には一貫して遊びと学びが軸にあり物事の組み立て方や空間のつくり方も圧倒的に今までの理論とは違うものでしたQ1チームみんなで五城目町にお邪魔したいと思います今日はありがとうございました!

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です

Q1チャンネルとは
Q1チャンネルは 株式会社Q1が運営するYouTubeチャンネルです ゲストを招いたトークセッションや 様々なQ1のプロジェクトなど 「山形×産業」の可能性を探るコンテンツを発信していきます