Creative City Yamagata

二拠点思考と
これからの仕事

2026.03.29.Sun

Photo 三浦晴子 Miura Haruko
Text 那須ミノル Nasu Minoru

第17回クリエイティブ会議「二拠点思考とこれからの仕事」レポート

2025年8月31日やまがたクリエイティブシティセンターQ1(以下Q1)にて「第17回クリエイティブ会議『二拠点思考とこれからの仕事』」が開催されましたこれはQ1開館3周年を記念した3日間のイベント「グランマルシェ2025」のプログラムのひとつとしてひらかれたトークショーQ1イベントスペースとオンラインとのハイブリッドで開催されました

これまで16回にわたってQ1で積み重ねられてきたこの「クリエイティブ会議」とは「クリエイティブと産業を暮らしで結び持続可能な社会づくりに繋げていく」というQ1のコンセプトを現実のものとしていくための公開型企画会議先進的な活躍をされているクリエイターやアーティスト経営者といったゲストをお招きしてQ1のディレクター陣がディスカッションしていきます

第17回となる今回のゲスト・スピーカーは未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』編集長の指出一正さん雑誌やメディアの編集者としてのお仕事を長くされてきただけでなく地域創生に関わるさまざまな活動を全国各地でされておりさらには「一般社団法人日本関係人口協会」という新しい組織づくりと運動をスタートさせているなど幅広いフィールドでご活躍されていますまた近年は東京と神戸での二拠点生活をされそうした日々の活動や思考を記録された新著『オン・ザ・ロード 二拠点思考』という本を2024年に出版されています(さらにその後2025年12月には『オン・ザ・ロード2 スーパーウェルビーイング』も出版そのなかでこのクリエイティブ会議のことも書いてくださっています)

モデレーターを務めた馬場正尊・株式会社Q1代表からは以下のようなコメントがありましたグランマルシェ2025のテーマを「仕事 WorkからPlayへ」と設定し次の時代の仕事のありかたを考えるきっかけにしたいと思ったとき縦横無尽にさまざまな活躍をされている指出さんはいったい新しい時代の「仕事」をどんなふうに考えているのかぜひ聞いてみたいと思った

さてクリエイティブ会議の前半は指出さんによるお話日本各地で関わってきたローカルのこと関係人口のこと本づくりのことそして二拠点思考のことなどについてスライドを見ながら語られました後半は指出さんと馬場Q1代表によるクロストークそして質疑応答という構成で進められました

ゲストの指出一正さん

以下聴衆のひとりとしてこのクリエイティブ会議のなかでとくに興味深く感じた2点について記します

縦走し寄り道し越境してゆく
という仕事の姿勢

雑誌編集のお仕事を30数年にわたって続けてこられたという指出さんですが30代前半の頃にじぶんが大好きでやってきたアウトドアと釣りの雑誌を離れてサステナビリティや環境をテーマとした『ソトコト』に転職をしたというお話をされましたそれはもっと新しい環境で新しい人たちと仕事をしていかないとその世界でしか仕事ができない編集者で終わってしまうという危機感を抱いたからだと語りそのときには退路を絶ってまったくゼロから新しい人たちと新しい関係をつくりながら仕事していこうと決意したと言います指出さんはそうした自身の仕事のスタイルを「縦走型」であると言いそれは寄り道や越境をあえてするような姿勢でありそういうやりかたのほうがじぶんを支えてくれるもうひとりのじぶんのようなものが生まれたり周りのひとが喜んでくれたりするようになるとおっしゃっていました

それはいわば山から海へと住処を変えてやがて戻ってくるサクラマスのようなものサクラマスはかつて川に棲んでいたヤマメのうちでも負け組だったものが海へと出て育った存在だと言われていますそれが海という別の環境のなかで大きく育ちやがて川へと戻っていくだからある瞬間だけを切り取って勝ち負けを判断することはできない——人の仕事も同じでもっと長い時間軸のなかで見ていくべきものだというお話でした

じぶんではなく「まわりの期待」が
あたらしいじぶんをつくってくれる

またかつて坂本龍一さんやリリー・フランキーさんといっしょに仕事しているなかで教わったこととして「依頼されたことは断っちゃいけない」という言葉をもらったというエピソードを紹介されていましたその真意は「じぶんができるかどうかよりもまわりの人は『あなたにやってほしい』と思っているのだからその期待に応えるように動けばいいだけということ」なのだと言いますそうやっていろんなところからの依頼を断らずに引き受けているとそれが新しい仕事を生んだり誰かにとても喜ばれたりする瞬間につながっていくのだ実際その教えに従ってさまざまな仕事を受けるようにしてきたそうです

馬場さんもその姿勢に共感するものがあるそうで「他者がじぶんをどこかに連れて行ってくれているという感覚を覚える」と応答されていました依頼された当初は「ええーっ?」って思ってしまうような仕事がそのあとに意外な展開を見せて意外なものを生んだり気づかなかった可能性を発動させてくれたりすることのほうが多い

モデレーターの馬場正尊さん

あたらしい自分やあたらしい仕事はじぶんだけでつくるものではないむしろまわりの環境や周囲の期待のなかから生まれてくるものということなのかもしれません

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です 

Photo 三浦晴子 Miura Haruko
Text 那須ミノル Nasu Minoru