Creative City Yamagata

BRUTUS的編集術

2026.03.31.Tue

Photo 三浦晴子 Miura Haruko
Text 那須ミノル Nasu Minoru

第18回 クリエイティブ会議 × TUAD TALK「BRUTUS的編集術」レポート

2025年11月26日東北芸術工科大学において「第18回クリエイティブ会議 × TUAD TALK『BRUTUS的編集術』」が開催されましたこれは山形市とやまがたクリエイティブシティセンターQ1(以下Q1)による「クリエイティブ会議」と東北芸術工科大学による「TUAD TALK」とのコラボレーション企画トークゲストとして登場したのは雑誌『BRUTUS』編集長の田島朗さんファシリテーターは東北芸術工科大学学長でQ1ディレクターでもある中山ダイスケさんです学生や一般市民など会場には100名の参加者が集まるとともに会議の模様はオンライン配信されました

ゲストの田島朗さん(右)とファシリテーターの中山ダイスケ学長東北芸術工科大学の講義室にて

「クリエイティブ会議」とは「クリエイティブと産業を暮らしで結び持続可能な社会づくりに繋げていく」というQ1のコンセプトを現実のものとしていくための公開型企画会議先進的な活躍をされているクリエイターやアーティスト経営者といったゲストをお招きしてQ1のディレクター陣がディスカッションするものです

他方「TUAD TALK」とは東北芸術工科大学の学内外のゲストが在学生に向けさまざまな話題やメッセージを伝えてゆくトークイベントです

ゲストの田島朗さんは雑誌『BRUTUS』の第11代編集長現在マガジンハウス執行役員も務められています創刊1980年の雑誌『BRUTUS』は45年にもわたって月2回の刊行判型ロゴの位置など雑誌の基本を変えることなく独特の存在感を放ちつづけてきたというすでにレジェンダリーなライフスタイル・マガジン数多くの雑誌がロゴやコンセプトや刊行ペースといったさまざまをリニューアルさせることで命を生きながらえさせているのとはまるでちがうスタイルを貫き通しているという世界的にも稀な存在です2024年には創刊1000号という記念のときを迎えたこの雑誌の独特の存在感の秘密とはいったいなんなのかそして雑誌というメディアのありかたを改めて考えさせられる時間となりました

前半は田島さんによるトーク『BRUTUS』とはなにかそのコアバリューとはなにかそしていまどのような展開を見せているのかといったお話が語られました後半は中山学長とのクロストークそしてその後は会場からの質疑応答という構成となりました

ここではいち聴衆として参加したこのトークイベントのなかでもとくに田島さんによるトークにフォーカスしそのなかで個人的に興味深く感じた点について記します

「特集主義」を貫きつつ
新しい視点(=NEW PERSPECTIVE)で面白がる

創刊から半世紀近くという長きにわたって『BRUTUS』が貫いてきた「特集主義」毎号「なにか」を特集して1冊をつくるというそのテーマはじつにさまざまな分野に及びますこのポップカルチャー総合誌の基本的編集方針は日本のオトナたちが心ゆたかにカルチャーを楽しむライフスタイルを特定ジャンルにこだわることなくランダムに提案してゆくというものだからこそフード音楽映画アニメ・漫画建築アートそしてそこにすら分類されないジャンルにまで及ぶなかでテーマを立てそのなかでたとえばワインやジャズコーヒーなど日本において時代の中で生まれたさまざまなブームの牽引役を果たしてもきました

そうした特集のなかからは「居住空間学」や「ひとりブルータス」などの名物企画が育まれてもきました近年では「怖いもの見たさ」「珍奇鉱物」などこれまでにはない斬新なテーマ領域も切りひらいていますここで重要なのはテーマや話題そのものの新しさではないことだと田島さんは指摘しますたとえテーマはそれほど新しくなくとも大事なのは「視点が新しいこと」なのだこれを「NEW PERSPECTIVE」という言葉で表現されましたそしてその「新しい面白がりかた」の提案でもっとも重要なのが雑誌の顔ともいうべき表紙であるとのことつまりその新しい視点を瞬間的に読者に伝えられるようなワンセンテンスの言葉とひとつのビジュアルにまで研ぎ澄ませることができるかどうかそこに「BRUTUSらしさ」が宿るか否かの勝負どころがあるということらしいのです

「編集とは集めるパワーと編むセンス」そのふたつが成り立ってこそのものなのだと言います新しい視点があるからこそ新たに編むことができるということなのでしょう新しい情報新しい価値新しい意見というよりは新しいものの見方新しい面白がりかたで「こういうように見ることができたらもっと楽しいかもよ」というメッセージを鋭く突き刺すそれが『BRUTUS』の秘密のひとつなのかもしれません

雑誌を編むちからが
メディアの枠をこえてゆく

新しい視点で雑誌を編集することで養われた「編むセンス」があれば雑誌以外にも可能性が広がるという話題へ「メディア」とはそもそも「媒介」という意味であり「発信者と受信者をつなぐもの」ですそのように捉え直したとき編集の仕事は「雑誌という出版物をつくる」ことから「さまざまなメディアでエディトリアルなコンテンツをつくる」へと大きくシフトします実際いまではすでに『BRUTUS』は雑誌だけに限らず消費者に喜ばれるコンテンツをさまざまなメディアを通して届ける「エディトリアル・サービスの先駆者」という存在となっているという紹介がありました

「BRUTUS ORIGINAL MOVIE」という動画「BHIVE」というクリエイターズ・コミュニティPBというクリエイティブ・ブティック取材した記事が検索できるマップ連動型アプリメディア「mapzine」までいずれもコアとなる編集のちからを使いながらそれぞれのメディアや場にあった編集によってそれぞれにコミュニケーションしたり課題解決したりしていくものとなっています動画でも単に雑誌で取材した記事を映像で撮り直して流すということではなく雑誌で掲げたテーマを動画というメディアならどう企画・編集するかを編集者が動画チームと連動しながら考え制作に携わっていくというような方法で動画だから表現できることをブルータスなりに考えていると言います

ポップカルチャーの総合メディアとして「新しい視点で面白がる」ことを雑誌だけでなくさまざまなメディアにひらいていく出版からデジタルへクリエイティブ・ブティックへコミュニティへアプリへとブランドをひらくそのことでコンテンツとビジネスがひろがるいまやさまざまなフィールドで『BRUTUS』らしい編集『BRUTUS』らしい表現が展開されていっているそうですそのように考えたとき『BRUTUS』とはもはや雑誌名にとどまるものでなくいくつものメディアを横断するブランドの名なのでしょう

限られた編集者たちが
さまざまにチームを組む編成スタイル

田島さんはしかしそのようにさまざまなメディアで展開するからこそかえってまた雑誌というシンボリックなブランドがまた生きてくるというようなことも指摘されましたつまり雑誌はリソースの源泉でありユーザーをグリップするための偉大なる装置である雑誌とはリアルなプロダクトでありオブジェクトそしてさらにいまでは新規参入がむずかしいメディア・ビジネスだからこそその質感や存在感はあらためて重要であるということのようです

こうした『BRUTUS』のありかたを支える編集部には14名ほどの編集者が在籍しているとのこと企画立案から発売までを月2回こなすその裏側には決してマンネリをうまない特殊なチーム編成があるとのことでしたデジタルチームも交えつつそれぞれがリーダーになりながらプロジェクトごとにちがう役職のひとやメンバーとチームを組んで仕事を進めていく毎回組むメンバーが変わるそうしたことも新しい視点を持ちやすいようにという狙いらしいのですそのとき編集長の仕事とはすべてのプロジェクトに対して誰がどのチームに入っていてどんな動きをしているか誰かの労働荷重が大きすぎたりしないか常に最大のパフォーマンスを発揮するためのチーム編成が機能するようにという人事のマネジメントでもあるようでした

『BRUTUS』編集長とは雑誌『BRUTUS』の編集長であることにとどまらずあらゆるメディアを駆使しながら『BRUTUS』というブランド全体を編集しマネジメントすることへそれを実践しながらやはり根幹となる雑誌『BRUTUS』のブランド価値を守り育てさらに輝かせていこうとしているという非常に野心的な試みの一端を垣間見たような気がします

『BRUTUS』は唯一無二の雑誌でありながら雑誌だけにとどまらないメディア展開をしているそしてそのことがかえってまた雑誌としての求心力を高めてもいるそんな存在なのかもしれません

最後の質疑応答では市民や学生から活発な質問がつぎつぎと山形市民も芸工大生も「BRUTUS好き」であることが明らかになっていく時間でもありました

クリエイティブ会議とは
Q1が目指す「クリエイティブと産業を暮らしで結び それらを山形の持続可能な社会へ還元する」ための具体的な方法論や事業の可能性をテーマに 先進的な活躍をされているクリエイター/アーティスト等のゲストとQ1プロデューサー/ディレクター陣がディスカッションする公開型の企画会議です

Q1チャンネルとは
Q1チャンネルは 株式会社Q1が運営するYouTubeチャンネルです ゲストを招いたトークセッションや 様々なQ1のプロジェクトなど 「山形×産業」の可能性を探るコンテンツを発信していきます

Photo 三浦晴子 Miura Haruko
Text 那須ミノル Nasu Minoru