Interview
「こころに平和をくれるもの」
vol.03 鎌田浩平さん
Text: 那須ミノル
real local山形ライター
https://www.reallocal.jp/yamagata

平穏に、日常を生きる。そのための知恵や工夫のようなもの。暮らしのなかに埋もれている、奥ゆかしさのようなもの。それらもまた、このまちに生きる人びとの、とても大切なクリエイティビティかもしれません。このまちで日々を営む一人ひとりの胸の内をたずね、しずかな声にじっと耳を傾けながら、その輪郭をぼんやりとでも浮かびあがらせてみたいものです。
いったい、あなたのこころに平和をくれているものはなんですか。きょうは、ゲーム制作会社のエンジニアでありCTOである鎌田浩平さんに話を伺います。
■プロフィール
鎌田浩平(かまた・こうへい)株式会社ブラックタワー取締役、チーフテクニカルオフィサー。1976年山形市生まれ。コンソールゲーム会社でエンジニア、テクニカルディレクターとしてゲーム開発に携わった後、2012年に「海外のインディーゲームのノリで制作できる、海外志向のゲーム会社を日本につくろう!」と、Richie CasperとともにBlack Tower Studiosを設立。日本だけでなくアメリカ、オーストラリアなどさまざまな国の開発者や開発会社とともにゲーム開発を行なっている。現在は東京・山形での二拠点生活を実践中。
「平和に生きているね」「穏やかだね」と言われれば、そうかもしれません。この性格は高校ぐらいからもうずっとこうだったような気がします。ふだんなにかに怒るようなことはほとんどないかもしれません。
ゲーム制作の仕事をしていると、スタッフに任せていた仕事がまったく進んでいなかった、という事態が起きることもたまにありますけど、それで声を荒げることもないですし、感情的になることもありません。まずはその事態をどう解決するか、ということが先ですし。それに、そのひとに任せたけれど「やっぱりできなかった」というのは、できなかったそのひとの問題というより、任せたこちら側の問題でもあるわけで。そのひとに怒るのはちがうな、と思います。
もちろん仕事でイライラすることはあります。職場や家庭でそういうオーラが出てしまうときもあるでしょう。それでも、他人に当たるということはないと思います。じぶんの仕事がうまくいってないとか、いっぱい溜まったことに対してイライラしているだけで、あくまでじぶんと仕事のあいだでのこと。ほかの誰かに対してのものではありません。
そもそも他人に怒るひとというのは、最初から他人に期待しすぎじゃないかと思います。とくに優秀なひとほど、相手もじぶんと同じことができるものと思いこんでしまって、それで相手に過剰な期待を寄せてしまいがちな気がします。だから、期待が大きいぶん失望も大きい、ということになってしまうのでは、と。
このひとがどれだけ仕事できるかわかっていれば、だいたいはそのとおりにやってくれるものですし、このひとはこれくらいだなってわかったら、わかったなりに接するだけのこと。すごくできるなら仕事を増やしたり、新しい仕事を任せてみたりします。また、これまでの経験上、考えかたはみんなそれぞれなので、「じぶんがこうだから」とじぶんを基本にしてテキトーな仕事の振りかたをしてしまうと大体うまくいきません。テキトーに振った仕事というのは、テキトーに跳ね返ってきてしまう。それはこちらの責任でもある。文句は言えないな、と思うんです。
仕事には、バックアッププランがあります。だいじな締切りがあるときは、それよりまえの「この段階で確認しておけば、なにがあっても最終的には大丈夫」というタイミングで締切りを自主的に設定しておくなどして、うまくいっていない場合のプランも用意しておくわけです。
これは職業柄かもしれません。ゲームデザインの仕事というのは、頭のなかで「このゲームは面白そうだな」と思ったものを一生懸命つくるわけですけど、実際につくってみたら面白くない、というのはよくあることなので。また、進行途中でクライアントから「仕様が変更になりました」と言われることもありますし。そういうときも多少ムッとすることがあるとしても、「そういうもんか」「それで良くなるんならいっか」くらいの感覚でいることも大切です。
仕事は、路線変更される可能性もあるし、途中で頓挫する可能性もある。じぶんたちの仕事はそういうものだと思っておくこと。じぶんが思った通りにはなかなかいかないと思っておくこと。そういうスタンスでいること。それが身についてくると、いちいちキレてもしょうがない感じにもなってきます。
わたしたちの仕事は基本的にチームワークなので、仕事するほど「いろいろみんな違うんだな」というのがわかってきて、どんどん穏やかになっていくんです。こっちの仕事の振りかた悪かったんだなとか、こういう頼みかたしたらこうなっちゃうんだなとか、このへんをはっきりさせないで頼むと痛い目を見るなとか……。すべてはじぶんがやったことの跳ね返りとして受けとめざるをえない。その意味では、おたがいへの理解を深くすること。それが大切なのです。
Text: 那須ミノル
real local山形ライター
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