Creative City Yamagata

やまがた植物散歩/
春のしらせ

2026.03.24.Tue

Text: 渡部桂
Katsura Watanabe
東北芸術工科大学
建築・環境デザイン学科教授

もう今年も3月すでにマルバマンサクが縮れた黄色い花をつけていますがまだまだ山形市郊外の野や里山は枯れた風景で晴れた日には陽光の暖かさにありがたみを感じます

マルバマンサク 東北芸術工科大学敷地内

山際を散策しているとこの季節の林床は見通しがよく雪の重みでぺたりと潰された落葉下から滑らかな地面のかたちがほのかに伝わってきますそれを体感したくてついつい林内に引き込まれ歩くのが何とも楽しいのです
もう少しでその地面から「スプリング・エフェメラル」といわれる植物たちが一斉に顔を出します早春のわずかな期間だけ地上に姿を現して花を咲かせ初夏には地上部を消してしまうこの儚い存在は妖精にも例えられますがその可憐さを実際に目の前にすれば決して誇張には感じないでしょう

スプリング・エフェメラルを代表するカタクリ(片栗) 山形県内

東北芸術工科大学の裏にある谷筋にはこれからアズマイチゲ(東一華)やキクザキイチゲ(菊咲一華)フクジュソウ(福寿草)が咲き誇ります落葉広葉樹林の林床で樹木が展葉する前の花を咲かせ樹冠に葉が茂る頃には身を潜めますどちらも群生していますが太陽の光を追って花を咲かせるため無数の花が一斉に同じ方向を向く姿は圧巻ですこの様子を見てけなげだと思うのは人間だけでこの短い期間に全てを賭け昆虫を巻き込んで受粉率を上げる強かな生存戦略が本質ですむしろそれを見て心を奮い自分こそけなげに生きたいと初心に帰るこの春の風景今年も楽しみです

黄色/フクジュソウ白/アズマイチゲ

Text: 渡部桂
Katsura Watanabe
東北芸術工科大学
建築・環境デザイン学科教授