もう今年も3月。すでにマルバマンサクが縮れた黄色い花をつけていますが、まだまだ山形市郊外の野や里山は枯れた風景で、晴れた日には陽光の暖かさにありがたみを感じます。

山際を散策していると、この季節の林床は見通しがよく、雪の重みでぺたりと潰された落葉下から、滑らかな地面のかたちがほのかに伝わってきます。それを体感したくてついつい林内に引き込まれ歩くのが何とも楽しいのです。
もう少しでその地面から、「スプリング・エフェメラル」といわれる植物たちが一斉に顔を出します。早春のわずかな期間だけ地上に姿を現して花を咲かせ、初夏には地上部を消してしまうこの儚い存在は妖精にも例えられますが、その可憐さを実際に目の前にすれば、決して誇張には感じないでしょう。

東北芸術工科大学の裏にある谷筋には、これからアズマイチゲ(東一華)やキクザキイチゲ(菊咲一華)、フクジュソウ(福寿草)が咲き誇ります。落葉広葉樹林の林床で、樹木が展葉する前の花を咲かせ、樹冠に葉が茂る頃には身を潜めます。どちらも群生していますが、太陽の光を追って花を咲かせるため無数の花が一斉に同じ方向を向く姿は圧巻です。この様子を見てけなげだと思うのは人間だけで、この短い期間に全てを賭け、昆虫を巻き込んで受粉率を上げる強かな生存戦略が本質です。むしろそれを見て心を奮い、自分こそけなげに生きたいと初心に帰るこの春の風景、今年も楽しみです。

Text: 渡部桂
Katsura Watanabe
東北芸術工科大学
建築・環境デザイン学科教授