Creative City Yamagata

Interview
「こころに平和をくれるもの」
vol.02 多田諭史さん

2026.03.20.Fri

平穏に日常を生きるそのための知恵や工夫のようなもの暮らしのなかに埋もれている奥ゆかしさのようなものそれらもまたこのまちに生きる人びとのとても大切なクリエイティビティかもしれませんこのまちで日々を営む一人ひとりの胸の内をたずねしずかな声にじっと耳を傾けながらその輪郭をぼんやりとでも浮かびあがらせてみたいものです
いったいあなたのこころに平和をくれているものはなんですかきょうはWeb制作を担うクリエイティブチームCloudy(クラウディ)のWebディレクター多田諭史さんに話を伺います

■プロフィール
多田諭史(ただ・さとし)/1976年 山形県生まれWeb制作チームCloudy代表現在は山形と宮城を行き来する生活を実践中


穏やかそうに見えますかじぶんではまったくそうは思いませんもしかすると穏やかというより静かというかさらにいえばただ単に「声がちいさい」だけかもしれませんむかしから大きな声を出すのがしんどくて声のボリューム上げていくともうツラいという感じになりますですからひとと会話していると「え?」とか「聞こえない」とかそういうリアクションをされることが多いです

わたしは就職したのはわりあい遅くて27歳くらいのときだったのですがはじめて勤めたその会社ではあまりに声が小さいからという理由で入社してすぐに声出しの練習をさせられました会社の社長から「なんでおまえはそんなに声が出ないんだ」と言われてアナウンサー教本みたいなものを持たされて社長とマンツーマンで向き合って「おひさまあかるいあはははは」みたいな発声練習をしましたその様子を見ていた会社の先輩たちからは「あいつ辞めるんじゃないか?」と本気で心配されていました

結果的にそれで声が大きくなることもわたしがすぐに会社を辞めることもありませんでしたがそんなことがあったくらい若いころから声がちいさかったし滑舌も良くありませんでしたおそらく今もそうですしかし一方でWebデザインという仕事はいわゆる専門職的なもので体育会系である必要もありませんしオタクっぽくても許されるところのある業界だと勝手に思っていて多少声が小さくても許してもらえると信じてきたところはありますお客さんにWebのことを伝えるときには営業マンみたいにハキハキと説明するよりはむしろゆっくりボソボソ喋るような説明のほうがウケるだろうと勝手に思っていましたし実際それを受け入れてもらってきたような気がしますしその会社を辞めてからもずっとその延長で現在に至っているかもしれません 

それに怒ることもありますたとえば息子に対してとかでも最近はそれもなくなってきましたねじぶんは修行の時期に入ったのかなと思うくらい怒るのをあきらめたところはありますというのも怒ったところでなにもいいことがないからです怒りに任せたり相手の感情に巻き込まれたりすることは精神的にしんどいですし怒鳴ったところでほんとうになんにもならないどころか逆にあとから後悔することばかりだということに気づきましたなのでもうやめよう正確にいうとあとで恥ずかしくなるのです怒ったあとは「やっちまった感」が強くなりますし怒ったときというのは言語化がうまくいかないのです

怒っているから相手になにかを言いたいでも熱くなっているからいいセリフがその場でぜんぜん出てこないということが起きてしまうむりやり言葉にしようとしても出てくるのは3分の1ぐらいのクオリティの言葉で言い放ってしまってから「ああもっとこう言えばよかったのに」みたいな後悔があとからどーんと押し寄せてくるんです言葉が感情に追いつかないのでしょう言葉として綺麗にまとまらなかったことがもう悔しくてしかたがないわけです

そうなると今度は後日夢のなかで抜群にきれいに怒鳴ってる夢を見たりするんです夢のなかではセリフは完璧です目覚めてから笑っちゃうくらいですおそらく怒って喋ってしまったときのかっこ悪さが夢のなかで修復されたり補完されたりしているのでしょうあぁすっきりしたみたいな気持ちにさえなりますでもそういうすっきりはやっぱり現実ではできないのです熱くなったときの喋りというのがほんとうに苦手なのでしょう

さいきんすこし生活環境が変わったことも影響しているのでしょうちょっと距離をおいて客観的に観察しているところがあるようです環境の変化のなかにいるじぶんのことや息子のことやいろんなことを振り返りの時期ということなのかもしれません静かに冷静にじっと見ているような感覚がありますそれは怒っているときの「反応してバーン」みたいなものとは真逆のとても静かな観察です