Creative City Yamagata

やまがた植物散歩/
夏の出会い

2026.08.07.Fri

Text: 渡部桂
Katsura Watanabe
東北芸術工科大学
建築・環境デザイン学科教授

夏本番強い日差しのせいか木々も山の陰影もいっそう濃く感じられます街ではほとんどアスファルトの上を歩いていますがたまたま出会う木陰の涼しさに改めて驚かされます酷暑日はエアコンが利いた室内にいるのが無難とはいえどうも人工的な冷たい風は肌に痛く自然の涼しさが恋しくなりますそうなると標高が高い所へ行くしかありません

夏の蔵王

この季節市街地から気軽に足を延ばせる蔵王は格好の避暑地ですなかでもドッコ沼(独鈷沼)はお気に入りの1つで水辺で涼み周辺を散策すると身も心も楽になりますそして実はその道すがらにも見逃せない風景があります冬はスキーコースになるゲレンデが夏には高山植物のお花畑に姿を変えていますもちろんコースを維持するために草刈りは欠かせませんが花やそこに集まる昆虫さらにそれを楽しみに訪れる人々にも配慮しながら管理されているようです

蔵王中央ゲレンデ/ヨツバヒヨドリ(紫)シシウド(白)ヤグルマソウ(大きな葉)が織りなす「お花畑」

8月になるとヨツバヒヨドリ(四葉鵯)を中心にシシウド(猪独活)やヤグルマソウ(矢車草)が小さな群落(パッチ)をつくりゲレンデをモザイクに彩ります

ヨツバヒヨドリ/名の通り葉が4枚輪生する
ヤグルマソウ/夏に極端に色づくものもある

その花々を目当てに飛来する代表的な蝶がアサギマダラ(浅葱斑)です淡い藍色を帯びた翅に赤茶色の差し色が優美で花々に引けを取りませんこの蝶は海を越えるほど長旅をすることで知られ翅に記されたマーキング情報を手掛かりに全国の研究者や愛好家が各地で記録しその経路を調査しています生物クラブの少年少女なのか白い虫取り網を持った若者が夏の山を歩く風景は遠い記憶が呼び起されるようなどこかホッとするような気持になります

アサギマダラが好んで訪れる花はフジバカマ(藤袴)やヒヨドリバナ(鵯花)などの仲間が代表的で淡い紫色や白色の細かく泡立ったような花をつけますヨツバヒヨドリも同じ特徴ですが緑が濃い夏の山では比較的に見つけやすい姿をしています見つけたら周囲を見渡してみてください旅する蝶との一期一会があるかもしれません

ヨツバヒヨドリを訪れるアサギマダラ/採餌フェロモン生成毒を得て捕食を逃れるためといわれる

Text: 渡部桂
Katsura Watanabe
東北芸術工科大学
建築・環境デザイン学科教授