Creative City Yamagata

A NEW YAMAGATA CUISINE
LATE AUTUMN: BEETS
旬のやまがた
晩秋:ビーツ

2026.10.14.Wed

Text: さいとうまさひろ
Masahiro Saito
ワインバー&キッチン 食堂メルカド店主
https://www.instagram.com/marchiyo

Photograph: Jose Echo
https://www.instagram.com/jose_echo_photos/

 1990年代初頭に読んだ『香水ジルバ』(トム・ロビンス著、高見宏訳)という小説で、ぼくははじめてビーツという野菜を意識した。まだこの世に存在しない妙なる香水を求め、ひとりの男が1000年の時空を旅するという奇天烈な冒険譚。その物語のキーアイテムがビーツだった。

 ぼくがはじめて収穫したままの姿のビーツを手にしたのは、山形で飲食店を開業してすぐの13年まえのこと。以来毎年使いつづけているが、豊富な鉄分を含む特徴を「食べる輸血」といってみたり、独特の風味があったりで、その存在感に力負けしていた。

 転機は7年まえ。スペインはバルセロナに世界中のナチュラルワイン愛好家が足を運ぶ空間がある。その名は「BAR BRUTAL」。バルセロナ出張をひかえた親しいお客さんに紹介したところ、「これが美味しかった」と写真つきで現地からレポートしてくれたのが、ビーツとネクタリンの前菜だった。シンプルなようだけど、この野菜の特長がじゅうぶんに引き出されたレシピに惹かれた。以来、毎年少しずつ手を加えながらレシピを進化させつづけている。

 今回使ったビーツは天童市の後藤陽子さんが手がけたもの。後藤さんが良品とするのはきれいな丸みのある大粒のもの。そして切り口が深みのある赤色に染まり、うずまき模様がくっきりしたものだという。これから寒さが増すにしたがい、甘みがさらに深まるそうだ。

 山形市内の青果専門店や直売所などで見かけたら、ぜひ手にとってほしい。皮つきのままオーブンで焼いたり、茹でたりしてから皮をむき、上質なオリーブオイルと塩だけでもじゅうぶんに美味しい。

(取材協力/株式会社かほくらし社)

ビーツとネクタリンのサラダ


■材料(ふたり分) 

・ビーツ(テニスボール大) : 1個
・ネクタリン : 1個
・リコッタチーズ(A)
  牛乳 : 500ml
  砂糖 : 10g
  塩 : 5g
  生クリーム : 50ml
  レモン果汁 : 大さじ2
  プレーンヨーグルト : 大さじ1
・ヴィネグレットソース(B)
  オリーブオイル : 大さじ1
  オレンジジュース : 200ml
  バルサミコ酢 : 大さじ2
・バジル : 数枚


■つくり方

1. ビーツの火入れ

皮付きのままのビーツをクッキングホイルの中心に置き、油と塩(分量外)をひとふりして、ホイルで包みこむ。180°で90分ほど焼く。粗熱がとれたら、ホイルに包んだままビニール袋に入れ(煮汁が流出するため)冷蔵庫で冷やす。この状態で1週間冷蔵保存可能。

2. リコッタチーズ(A)をつくる

小鍋に分量の砂糖、塩、牛乳を入れ、中火以下の火にかける。温まりはじめたら生クリームを入れ、ホイッパーなどでよくかきまぜる。鍋肌に小さな気泡が見えはじめたら火を止めて、レモン果汁を加えてよくかきまぜる。粗熱がとれるまで、鍋に入れたまま冷ます。ザルの上に厚手のキッチンペーパーを敷き、鍋のリコッタを静かに流しこみ、分離した水分(乳清)を切る。ザルにあげたまま30分ほど置く。ボウルや容器に移し、ヨーグルトを入れよくまぜて完成。冷蔵庫で保存する。

3. ビーツをヴィネグレットソース(B)で煮込む

火入れ済みのビーツの皮をむき8切れ、もしくは16切れの串切りにする。フライパンにオリーブオイルをひき、ビーツを重ならないよう入れる。火にかけたらオレンジジュース、バルサミコ酢を注ぎ、中火以下で煮込んでいく。時々、上下を返しながら、とろみがつき、水分(ヴィネグレット液)がほぼなくなるまで加熱する。火を止めたら、仕上げに自然塩(分量外)を振り、冷蔵庫でよく冷やす。

4. 仕上げ

ネクタリンは皮をむき8切れ、もしくは16切れの串切りにする。ネクタリンを皿に並べ、リコッタチーズ、調理済みのビーツ、バジルをのせていく。仕上げにエクストラヴァージンオリーブオイル(分量外)をひとまわし、好みでクルミなどのナッツを散らす。

5. バリエーション

ネクタリンのほかに桃、洋梨やリンゴで代用可能。それらのフルーツはコンポートにしてから使うと、ビーツによくなじむ。リコッタチーズを青カビのチーズに変えたり、あるいは追加したり。生ハムとルッコラ、クレソンなどを加えると、さらに充実した前菜のひと皿に。


A YAMAGATA NEW CUISINE
旬のやまがた

海や野に、食材に恵まれたやまがた。なかには地元でもお目にかかるのがまれだったり、美味しさの引き出しかたが知られていなかったり…そんな「山形産」もあったりします。そうした食材にスポットライトをあてながら、新しいやまがたの食の魅力を発信していきます。

Text: さいとうまさひろ
Masahiro Saito
ワインバー&キッチン 食堂メルカド店主
https://www.instagram.com/marchiyo

Photograph: Jose Echo
https://www.instagram.com/jose_echo_photos/